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人理を守れ、エミヤさん!
禁句に気をつけろジャックさん!
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「マスター!?」

 制止され、信じられない思いで俺を見上げてくる。そんな沖田に俺は苦笑した。手振りで示すまでもないのだ。腕を伸ばすと、その皮膚の下から一本の剣が突き出ている。目を見開く彼女に、俺は言った。

「悪いが、俺が限界だ。これ以上はやれん。お前一人に追わせる賭けはしたくない」
「し、しかし……」

 言い募ろうとして、自身の戦闘での爆弾の大きさを理解しているのか、沖田は俯いた。反論する資格がないとでも思ってしまったのかもしれない。
 遠ざかっていくペンテシレイアが吼えていた。二度目の敗北が、悔しくて悔しくて堪らないのだろう。しかも敗因は自分である。まんまと好機を潰された己の不覚が敗北を招いたのだ。怒りは今、自分に向いているらしい。

「覚えていろ、覚えていろ、ジャック! 次だ、次こそ確実に殺すッ!」

「ここまでだ。俺は飯食って糞して寝る。皆もそうしろ、悪いがお前らに訓練をつけてやる件は後回しにする」

 ペンテシレイアの遠吠えを聞かなかった事にする。本人にその気はなくとも、負け犬のそれだ。俺は弓と矢を投影し、それに文字を刻んで彼方へ走るペンテシレイアに射掛ける。
 殺意のないそれを難なく掴み取った女王は、英文で記されたそれを見て――怒気を、殺意を裏返し、腹を抱えて再び笑い転げそうになってしまった。

 ――勝者は寛大だ。またいつなりとも挑んでこい――

「ハハハハハハ!! ハァッハハハハハハハ!!」

 笑った。未だ嘗てなく、愉快だったのだ。
 ペンテシレイアは笑う。気持ちのいい敗北だった。なるほど、挑めときたか。この身は挑戦者となったのか。サーヴァントとして感じるものがある。
 マスターとするなら、あの男がいい。いや、あの男以外に己のマスターなど務まるものかとすら感じる。

 ――実際のところ、今の矢文で俺が狙ったのは、次の戦いを有利に進めるための心象操作を図っただけなのだが。

 屈辱的だろう。これで次は怒り狂って来るに違いない。そうなれば単調になってやり易くなるはずだ。

 そう、思ったのだ。














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