綱渡りが好きだねジャックさん!
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投影するのは冬木で見た大英雄の斧剣。元は神殿の柱から削られただけの塊。しかしそれには剣としての属性があった。持ち主が狂化していたとしても、その武威に影響されたが故かもしれない。強大な霊格は、時として多大なインフルエンスを与えるものだ。
引き出すはその奥義。完全な再現は到底不可能でもその一片は引き出せる。渾身の魔力を振り絞り巨大な斧剣を振るった。
「全工程投影完了――是、射殺す百頭」
一瞬にして繰り出される超高速の九連撃は、十名のケルト戦士を一瞬にして屠ってのける。
第三特異点で本人と戦ったから分かる、なんて出来損ないな投影だ、と。しかしそれですらサーヴァントにも通じる絶技となるのだから恐ろしい。二度とヘラクレスとは戦いたくない――そう思った瞬間だった。
遠くから、一直線に、こちらに駆けてくる巨大な殺気を感じて慄然とした。
まるで死の津波。本能が体を硬直させる。それを瞬間的に振りほどいて、身を隠すのには邪魔な斧剣を消して身を隠した。
現れたのは、ペンテシレイアだった。
「――ァァアキレウスゥゥゥッッッ!!」
「ッッッ!?」
殺意を。憎悪を。極限まで煮詰めたそれが、辺り構わず放射されている。直接向けられたわけでもないのに、肌が粟立つかのようだ。
神性を完全解放し、目を赤く、眼球を黒く変色させたペンテシレイアは、先刻の数倍にも膨れ上がった暴威を纏っている。――ペンテシレイアは、狂戦士だったのか。俺は漸く彼女のクラスを察した。
物陰に隠れる俺の視線の先で、狂える女王は頻りに何かを探している。やがて気配を見失ったのか、荒い呼気で忌々しげに吐き捨てた。
「……確かに、今……アキレウスの……ギリシャの英雄の気配を感じたはずだが……」
「……」
「気のせい、なのか……? ……奴なら、まさか雑魚のように隠れ潜んだりはしないだろう。ならやはり……気のせいか……」
心底残念そうに苛立ちを鎮め、女王は俺を探し出す為に辺りに気を配りながらその場を離れる。
普段は理性があるが、切っ掛け一つで狂化し、しかも数倍も戦闘力が跳ね上がる稀有な狂戦士らしい。俺は誓った。ペンテシレイアが近くにいる時は、絶対にギリシャに関係する宝具は使わない、と。
下手をしなくても即死する自信があった。
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