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人理を守れ、エミヤさん!
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。そして敗れた。あの男はペンテシレイアをただの敵として見た。そして勝利したがこの命を獲るよりも取るに足りない雑魚を救うのを優先した。それを傲慢などと蔑みはすまい。奴はこの身に勝ったからこそ、選択の自由があったのだ。その権利に噛みつくのは負け犬よりも惨めである。野良犬の所業だ。
 ならば次こそは、何を於いても殺しておいた方が良かったと後悔させる。再戦とはそういうものだ。雪辱を晴らす戦とはそういうものなのである。沸々と煮え立つ戦意がある。雑魚どもの痕跡を辿れば、必ず奴にかち合うと確信していた。

 河と森に挟まれた地形を見た時、ペンテシレイアは笑みを浮かべたものである。

 ――来る、な。

 偉大な軍神の血が教えてくれる。戦士としての本能が報せてくれる。
 あの男は掛け値なしに英雄だ。そして英雄とはこうした“”機“”を逃しはしない。このペンテシレイアの目に狂いがなければ、必ず此処で仕掛けてくる。

「全軍、止まれ」

 ペンテシレイアが指示を出すと、一万もの戦士団は静止した。
 穢らわしい女王が無尽蔵に召喚した戦士であり、本来なら縊り殺してやりたいが、ケルト戦士の勇猛さはアマゾネスの女戦士にも劣らない故に指揮官として我慢はしよう。率いる戦士に罪はない、というにはこの戦士らはあの女王に近すぎるが、どうせあれを殺せば消える傀儡でしかないのだ。好きに使い潰してやればいい。

 ペンテシレイアは思案する。罠があるか、と。しかしフィオナ騎士団を相手取った後ならば、奴にそれを用いる余裕と時間はあるまい。突き進めばいい、とは思うが。その思考停止はあの憎たらしいほど素晴らしい雄敵への侮辱となる。真に打ち倒すべき敵に、手を抜くなどアマゾネスの名折れだろう。
 故に慎重に、しかし大胆に、そして不敵に進撃するまで。ペンテシレイアは軍を二つに割った。五千を先に森に向かわせ、索敵させる。斥候としては数が多すぎるが、少数ならそのまま音沙汰なく消息を絶つだろうと考えたのだ。ペンテシレイアに深傷を与えた女剣士の事を忘れてはいない。五千とはそのまま、あの男と女剣士への評価でもある。
 その間にペンテシレイアは、残り五千を率い河と森の間に進む。此処で攻撃してくるならそれはそれでいい。奇襲があるならそれを蹴散らしてくれる。逃げるなら森の中にしか道はないが、その森には五千の戦士団を送り込んだのだ。挟み撃ちにされるだけである。

 さあどうする。この地形を利用しないのか? そう嗤うペンテシレイアは――

「っ?」

 ――予想を、良い意味で裏切られた。

 前方に人影がある。森に潜まず、河に潜らず、地に伏せず。屹立する剣の如き男が立っていた。

「は――」

 不意打ちをしない。堂々と迎え撃つように、その白髪の男は黒弓を構えていた。
 くすん
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