エピローグ
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たのは、新聞以上にぐちゃぐちゃに丸められた薄い紙きれだった。いい度胸だこの野郎と怒鳴りつけようとするのを寸前でぐっとこらえてその紙を開くと、すぐにその正体が分かった。小切手、それもその数字には随分とたくさんのゼロが並んでいる。
「この記号、確かユーロか?日本円だとざっと、あー、500万ってとこか。どうしたんだ、これ?」
「昨夜の優勝賞金っすよ。表彰の後に貰った」
「羨ましいこったねえ、アタシが現役の時でもこんなゼロだらけの額めったに拝んだことないよ。おい鳥居、先輩には当然何割か奢るんだぞ」
「1円でも入ってくりゃ喜んで奢りますよ、もっとよく見てください」
「あー……」
その時点で流石の彼女にもオチは予想がついたが、一応小切手をさらに広げて確認する。くっきりと印刷されたその銀行名は、案の定フルール・ド・ラバンクとあった。ただでさえ違法な金であるうえ、おまけにその銀行は摘発真っ最中。どう控えめに表現しても、もはやこの小切手の換金が絶望的だろうということは彼女にも理解できる。
「まあ、なんだ。ドンマイ」
「俺の金ぇー……」
デュエル中の生き生きとした様子からは想像もつかないほどに俗物らしさを全開にして嘆く鳥居。つまるところこちらが彼の素であり、デュエル中の人格は半ばカードを手にしたときに切り替わる二重人格のようなものである。そのことを改めて実感しつつ眺めながら、昨夜彼女自身が戦った宿敵である巴光太郎が去り際の最後に残して言った言葉を思い出す。彼はあの時、今回の裏デュエルコロシアムは鳥居が優勝しないと困る、そう言っていた。おそらくあの時点ですでに摘発によって小切手が紙切れになった、あるいは近いうちにそうなるであろうことは彼には分っていたのだろう。そしてあの参加者のうち他の誰かが優勝していたら、そんな銀行を経由して賞金を用意しようとした彼ら自身の裏社会での信用も地に堕ちる。
だからこそこんなゴミを掴まされてもその経歴上どこかに訴えるわけにもいかず泣き寝入りするしかない彼が優勝し、この小切手を受け取る必要があった。彼女の中でようやく、パズルのピースがはまる。
「なるほどねえ。まんまとアタシらは、狐に化かされたってわけだ」
「なんですって?」
「あーいや、こっちの話だよ。でもほら、優勝したってことは、お前も自分のデュエルがやりきれたんだろ?ならまあ、それはそれでいいじゃねえか」
「そりゃそうかもしれないですけどさあ……でもこれだけの元手があれば、昔解散の時に置く場所もないからって二束三文で売っ払った大道具、ちゃんと買い戻して保管用の倉庫ぐらい兜建設に頼んで割安で建てさせて、また昔の仲間に連絡とって……って、俺も結構大真面目に考えてたんですよ?それがさあ、こんなことって……あー、俺の金ぇー……」
彼は彼なりに、皮
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