エピローグ
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またもやカメラが動き、現地のレポーターから記者会見用の簡易セットへとピントが合わせられる。そこに現れたのは整った顔立ちに浮かぶ理知的な表情と赤い縁のメガネが特徴的な、腰まで伸びた銀髪を肩あたりでゆる三つ編みに結う日本人女性。きっちりと着込んだ制服をその内側から決して慎ましやかではない程度に盛り上げて自己主張するふたつの膨らみに対し報道陣から向けられる好色な視線もどこ吹く風に、糸巻の記憶通りの女性が一礼の後に口を開く。
『まずはじめに断っておきますが、今からこちらの申し上げる内容はあくまで要点のみです。より細かい内容は判明次第追って何らかの形で公表いたしますが、今の段階では現時点でこちらが突き止めた事実のみを明らかにさせていただきます』
その顔立ちに似合った理知的な冷たい声が、フランスの街に凛と響く。質問を受け付けるつもりはない、との言外に込められたプレッシャーに静まり返った会場に対し、まるで記憶の中にあるそれと変わらない戦友の姿にかすかな小気味よさを感じて、テレビ越しに糸巻は自分の口元が緩むのを感じていた。
『ご理解いただけたようですので、手短に説明に当たらせていただきます。まず結論ですが、フルール・ド・ラバンク社は黒でした。我々の押収した資料からは、彼らが組織ぐるみで「BV」への資金援助、及び裏デュエルコロシアム関連で動いた金の資金洗浄、果ては身分を偽ったテロリストへの保証人……叩けば埃だらけ、とはこのことを言うのでしょうね。一般の口座開設者の方への補填に関してはこちらも今後この国と協議していく予定ですが、少なくともフルール・ド・ラバンクの名がこれ以降日の当たる場所で経営を続けることはないでしょう』
「しっかし、フルールがねえ。鼓の奴、ずいぶん思い切ったことしたもんだ」
独り言ちながら、ずっと咥えたままだった煙草にようやく火をつける。フルール・ド・ラバンク、銀行としての経歴こそ比較的浅いものの比較的緩い条件で融資を受け付けることに定評があり、そのトップは世界の長者番付に常連として名を連ねる程度には羽振りがいい。それだけの会社にメスを入れたということは、かなり入念な根回しと証拠の入手が必要だったはずだ。
ゆっくりと吐き出された紫煙に遮られ白く染まったテレビ画面の中では、今の簡潔にして簡素な説明に対しその張本人とは対照的に慌てふためく報道陣の様子がよく映っていた。そしてその様子を尻目に、あっさりと背を向けて立ち去ろうとする鼓。しかしその中で1人、まだ青年といっていいほどに若い1人の記者が立ち上がってマイクを向ける。
『こ、これだけは教えてください!どうして、今回の強制捜査に乗り出したんですか?そのきっかけは?』
『……私も代表としてこれから今回の件について処理しなければならないことは数多いので、質問を受け付けるつもり
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