ある外交官の独白・2
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の男こそ、ブルネイ鎮守府の提督であるレイジ・カネシロ。暗号名(コードネーム)『evilking』と呼ばれる怪物だ。
「……ん?おぉ、あんたがモリソン大使か。遠路はるばるようこそ、ブルネイ鎮守府へ」
「あ、あぁ。よろしく」
簡単な挨拶をし、握手を交わす。私は正直面喰らってしまった。前任の大使の時代から勤めている大使館職員には『アレは人の皮を被った悪魔だ』とか『下手をするとその場でミンチにされかねない』などとさんざん脅かされたのだが、目の前の男はその身体と顔付きで威圧感はあるものの、その顔は常に朗らかに笑っている。こんな穏やかそうなのが悪魔だと?笑わせてくれる。
「大淀ぉ、コーヒーとお茶請け、2人分大至急〜」
「はい、間宮さんに頼んできます」
見ろ、今も暢気に会談中のコーヒーなど注文している。こんな奴にマトモな交渉など出来る筈もない。
「さて、と。会談の前に注意事項を1つ。この会談は撮影されています」
「何ですと!?これは秘密裏に行われる事前調整の為の会談では無かったのですかな?」
「まぁまぁ、話は最後まで聞いてください。後々この場限りでの発言だったと意見を翻されても困りますんでね、記録用ですよ記録用」
「まぁ、それならば……」
「では、改めまして。コーヒーが来る前にそちらの要望を伺っておきましょうか」
「要望……ですか?」
「えぇ、ウチも随分好き勝手にやらせてもらってるとは言え、日本という国に属する組織の一部です。日米関係を悪化させるのは本意ではない……そこで、このような場を設けさせてもらいました」
成る程、能天気な男かと思いきや長年鎮守府の長を勤めているだけの事はある。噂ではこの男の武勇ばかりが目立つが、政治的手腕も中々の物なのだろう。
「であれば、遠慮なくホワイトハウスからの要望を伝えさせていただきます。ブルネイ鎮守府には、今保管しているネームレベル……個体名『リバースド・ナイン』及びその統轄ユニットである『ヴェスタル』の遺体を此方に返還頂きたい」
「ほぅ?『引き渡し』ではなく『返還』、と来ましたか。それはまた何で?」
「はぐらかさないで頂きたい。アレは深海棲艦へと堕ちる前には我が合衆国の実験体……その位は調べているのでしょう?言わば国家の機密事項です。それを同盟国とは言え、他国の軍組織が所持していていいハズがない」
「成る程、成る程……筋は通っていますなぁ」
面倒そうに、しかし少し面白がっているかのような喋り口でそんな事を語りつつ、胸ポケットに手を伸ばし、そこから煙草を取り出すカネシロ。1本咥え、火を点けて紫煙を吐き出す。わざとらしく私の顔に向けて煙を吐きかけて来た。段々と苛立って来る。
「そうでしょうとも。さぁ
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