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提督はBarにいる・外伝
ある外交官の独白・2
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「ボディチェック等はしなくてもいいのかね?」

 私がそう尋ねると、少女は可笑しそうにクスクスと笑い出した。

「大使は交渉にいらっしゃったのでしょう?であれば、持ち歩いているのはせいぜい護身用の拳銃くらいでしょう。まさか、交渉の席で発砲したりはしないでしょうし、お預かりする必要はありません。それに……」

 眼鏡の奥で、笑っていた少女の眼がすぅ……と細められる。

「たかが拳銃程度で、私達が制圧されるとでも?」

 気負うでもなく、威圧するでもなく。当然の事だとでも言うかのように少女はそう断言した。





 少女(オオヨド、と言う艦娘らしい)に先導されて会談の行われるという応接室に向かう。その途中の廊下には、防弾ベストを着込んでアサルトライフルやサブマシンガン、果てはショットガン等を携行した少女達が険しい顔付きで闊歩していた。

「物々しい雰囲気ですな」

「一応の備えです。以前、そちらの国の大使館職員を名乗るテロリストが侵入した事がありましたから」

 サラリと言ってのけるオオヨド。テロリストが侵入した、という事実は日米両政府の公式見解であり、日米安保条約には何の揺らぎもなく、両国は信頼できる同盟国である……というのは建前で、本当の所は今回のトラブルを引き起こした一派の勇み足というか、完全なる独断専行。要するに暴走が引き起こしたトラブルだ。その件でもここには借りがあるというのに、儲けに眼が眩んだ馬鹿共のお陰で胃がキリキリしてきた。

「こちらです。どうぞ」

 オオヨドが扉を開け、中に入る。中を見渡せば……成る程、応接室に相応しいだけの調度品が置かれている。そして部屋の中央、テーブルを挟んで向かい合わせになっているソファの上に『それ』は横たわっていた。

 黒い上下の軍服(帝国海軍の第一種軍装という奴らしい)に身を包んだその巨体は、靴を履いたままテーブルの上に脚を投げ出し、顔に軍帽を被せている。肩が一定の間隔で上下している所から見て、恐らくだが眠っているのだろう。

「提督?」

 オオヨドが声を掛けるが、反応はない。余程熟睡しているのだろうか。はぁ……とため息を漏らしたオオヨドが、顔に被さっていた軍帽を剥ぎ取って額を平手打ちにした。ベチン!と痛そうな音が響く。事実、その音が響くのとほぼ同時に

「いでっ」

 という小さな声が聞こえたのがその証拠だろう。

「もう、お客様を呼びつけておいて何で寝てるんですか!?」

「仕方ねぇだろうがよぉ、ここん所寝不足続きなんだからよ」

 怒鳴っているオオヨドをよそに、眠そうな声が響く。テーブルに乗っていた脚が床に降り、ソファに横たわっていた身体がムクリと起き上がる。生欠伸を噛み殺しながら、頭をガリガリと掻き毟っている目の前
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