第七十六話
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二階に戻ってきた俺は、掃除用具入れの後ろに隠れて、二階の様子を探っていた。
如何せん、缶蹴りを放ったらかしにして阿武隈と絡んでいたから、今がどんな戦況なのか、ひとつも分からない。精々、若葉と冬華が捕まってないってことぐらいだ。
現在、二階には目立った人影はなく、しんと静まり返っている。俺の周辺には、過去が蹴破った窓ガラスの破片が散らばっていて、中々危ない(軍刀持ってる俺が言うのもなんだが)。
「……誰が残ってんだ?」
少なくとも、誰も捕まっていない、なんてことは考えられない。俺と冬華と若葉を抜いた五人対、実働五人と指揮官二人が対等なわけない。
もっとも、誰かが統率力を発揮してれば話は別なのだが……どうにも、マトモな訓練を受けていないみたいだし、そこは期待しない方がいい。最悪、全員捕まっていることも考えておこう。
「…………」
腰に帯刀している軍刀を右手でそっと撫でる。缶蹴りをするという事だったから、いつもの愛刀ではなく、訓練用に持ってきていた、刃を潰してある、ただの鉄の棒のような軍刀だ。
こいつを使ったら一瞬でカタがつく。これをチラつかせて、怯えてこなかったらそのまま進み、向かってきたら切り捨てればいい。
「……なんて、あんな阿武隈見たら、使う訳にもいかねぇわな」
俺は軍刀を腰から外し、掃除用具入れにそっと立てかけてる。
これを身につけて向かってこられたら、どう考えても怖がられる。
今までは癖で帯刀していたけど、これからは出来るだけ外すようにしておこうと、心に誓った。
それはさておき、これからどうするかを考えなければならない。
「一人で特攻……するとしても、奇襲みたいに一撃で仕留めないと負けだよなぁ……」
向こうには、トンデモレーダーの春雨がいる。どれだけ策を練っても、動いただけで看破される。
相手の処理速度以上の速さで遂行しようとしても、俺は冬華ほどの身体能力はない。
「……仲間探そ」
兎にも角にも、人が居なければ打てる手もない。誰かが生き残っていることを祈ろう。
「…………さ……………き…………さん!」
すると、どこかで会話をしているような声が聞こえてきた。
「木曾さん!無事だったんですね!」
見ると、不知火が部屋の一室から出てきて、こちらに小走りでやってきた。
「ああ。お前も無事で何よりだ。ところで不知火、そっちはどうだった?」
ホッと息を吐いて安堵したところで、不知火に状況を聞く。
「えっと……私が確認した限りですと、山城さん、瑞鳳さんは捕まってしまいました……先程までは、五十鈴さんと一緒に居たのですが、はぐれてしまいまして……」
「……やっぱり、捕まってるやつも出てるよな」
しかし、
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