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人理を守れ、エミヤさん!
人理を守れ、ジャックさん!
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うの?」
「――さて。前に名乗ったと思うが」
「まわりがうるさくてきこえなかったの」

 そうか? 俺が名乗っていた時は静かだったはずだが。聞いてなかっただけで、これは拙い言い訳なのだろう。俺は微妙に笑む。

「そうか。なら仕方ないな。俺の事は好きに呼べばいい。野郎連中みたいに『BOSS』でもいいぞ」
「や。おなまえ、きかせて」
「……」

 手強い。沖田より何倍も。

「……お嬢ちゃんが、名前を考えてくれ」
「わたしが?」
「ああ。どうせ名乗ってもすぐ忘れちゃうだろう?」
「そんなことないもん! みれい、おにーさんの名前ぐらい、おぼえれるもん!」
「そうかそうか。でもなるべく覚えやすい方がいいよな? だからお嬢ちゃんが考えてくれ」
「むぅ……」

 少女は難しそうに悩んだ。むーむー呻く少女に苦笑する。意地悪が過ぎたかな。でも、名前思い出せないしなぁ。誰かに『俺の名前ってなんだ?』と訊くのも間抜けみたいで嫌だしな……。
 悩んでいると、少女はパッと目を輝かせた。何やら思い付いたらしい。トランプを襤褸の箱から出して、それから無作為に一枚を選び出した。それは、ダイヤのジャックだ。

「おにーさん、ヘクトール!」
「えぇ……?」

 トランプの絵柄の由来を知ってるなんて偉いなと誉めてやろうかと思ったが、その名前負け感に俺は貌を顰めてしまった。
 その反応に少女は不満そうに頬を膨らませる。

「ヘクトールなのー!」
「いや、それは……せめて別のにしてくれ。その名前は俺には重すぎる」
「……もんくばっかり。しかたないなぁ」
「はは」
「じゃあ、ジャックね」

 一気に安直になったなと頬が更に緩む。
 しかしトロイアの英雄と同じ名前でないだけ、それでいい気がした。

「わかった、じゃあ俺はジャックだ。身元不明(ジョン・ドゥ)ってのも味気ない」
「おにーさんはジャックね!」
「ああ、格好いい名前をありがとうな」
「えへへ……」

 頭を撫でてやると、嬉しそうに笑顔を咲かせた。
 大人連中が疲れてる中、やたらと元気である。馬車の中にいたのだろう。まあ、子供だからな。
 少年がなんとも言い難い表情でこちらを見ている。そんな彼が言った。

「……名前は分かったけどさ、アンタって大陸軍じゃないんだろ。BOSSなんて呼ばれてさ」
「そうだな」
「じゃあさ、アンタの部下も、大陸軍じゃねぇだろ」
「……そう、なのか?」

 腕組みをして首を捻る。
 その理屈はおかしい。近くの兵士を手招きで呼んで訊ねた。お前らは今も大陸軍だよな? と。
 すると彼は苦笑して答えた。「いえ、今はBOSSの部下です」

 えぇ……。

「ほらな!」

 少年が得意気に言う。

「アンタ
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