人理を守れ、ジャックさん!
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うのは勿体ない。
肉体の変質はこの際だ、許容しよう。だが……記憶が欠けるのだけは、なんとかしたい。なんらかの対策をしておいた方がいいが、その対策は俺には無理だ。
出来る限りあの固有結界の射出は使わない、という案しかなかった。
――結局、先に逃がした連中に追い付いたのは、最初の目的地である砦に辿り着いた頃だった。
追い付くのに二日も掛かった。それほど必死に走ったのだろう。そしてそれに追い付ける体力がこちらの兵士達になかった。どちらも無事なようで、それだけは朗報だ。
砦内に入るとカーターや他の兵士達が整列し出迎えて来る。明らかに数が少ない俺達に、彼らの目に悲痛さが過ったが……カーターに骨壺を渡す。戦死者と親しかった者を募り、彼らに骨のダイヤを渡した。
落涙は、静かだった。彼らの肩を叩き、俺は彼らの涙が止まるのを待って告げた。
「砦内の物資は?」
「我々が一月間食っていける食糧があります。幸運にも腐ってはいませんでした」
カーターが答えた。
「その他、陣を築く為の木材、天幕、荷車なども。予備の武器もありました。砦の状態はほぼ無傷です。恐らく戦闘が起こった際に出撃し、そのまま壊滅したのかと……」
「そうか」
頷き、俺は思案する。
難民達も不安げにこちらを見ている。疲弊はさらに色濃くなっていた。
考えるまでもない、か。
「……二日、ここで休む。体を休め、その後に南東へ更に進むぞ」
「は!」
カーターが敬礼すると、兵士達もそれに倣って敬礼してくる。苦笑いを浮かべそうになりながら答礼し、腕を下ろすと彼らも敬礼を解いた。
「カーター、見張りの選抜を任せる。それと難民達の休む場所も取り決めろ」
「は!」
「お前達も今日は休め。明日は最低限、見れる程度に鍛えてやる」
散れ、と手振りで示すと彼らは散っていった。黒馬をどこにやるか考えるも、俺から離れようとしなかった。顔を擦り付けてくる黒馬に笑うしかない。
名前、考えてやらないとな……死線を共に越えたからか、それともパスを通じているからか、妙に愛着が湧きつつある。
と。難民達の中から一人の少女が出てきた。いつぞやの少年の妹の片割れだ。まだ五歳程度だろうか。慌てて兄妹達が追いかけてくるも、捕まえるより先に俺の前にまで来た。
その手には、薄汚れたトランプが握られている。遊び道具だろう。俺に渡したいのではなく、持っていたのをそのまま手にしているだけのようだ。
「おじさん」
「……お兄さん、だ」
「おにーさん」
「ああ」
たどたどしく話しかけてくる少女に、俺は目線を合わせるように地面へ片膝をついた。
愛くるしい少女の様子に、相好が緩む。彼女は質問してきた。
「おにーさんの、おなまえ、なんてい
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