人理を守れ、ジャックさん!
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合わせた記憶。彼女との思い出。全て覚えている……。……本当に全てか? 本当に? ……覚えてる、はずだ。記憶を辿っていっても欠けはない。途切れているものもない。覚えてる、ちゃんと覚えている。
心底、ホッとして。安堵した。よかった……。本当によかった。名前は亡くしても、アルトリアの事は覚えていた。
「む……誰ですか、それ」
「……?」
ふと、下から睨み付けてくる視線に気づく。沖田が頬を膨らませて、不満そうに睨んできていた。
「沖田さんはその、アルトリアって人じゃありませんよ……」
「あ」
彼女の不服顔に声を漏らす。確かに失礼だった。
思わず安堵した顔のまま苦笑する。更に沖田はぶー垂れようとしていて、なんとか宥められないかと少し焦ったが、沖田は不意に目を丸くした。
「マスター? その、眼が……」
「眼?」
「右目の色が……変わってます」
言われて剣を投影する。その刀身を覗き込み、隻眼を見詰めると、確かに琥珀色の瞳が変色していた。
かといってエミヤのそれでもない。オルタのようなくすんだ金色。傷んだ黄金。微かに目を見開き、俺は肩を竦めた。
「――……イメチェンだよ」
「はい? イメチェン?」
「ああ。色つきのコンタクトレンズを入れたんだ。眼がよくなって、動体視力も上がってる。しかも金色は格好いい。金色は英雄王印だから完璧だな、一分の隙もない」
ふ、と笑う。沖田はへぇ〜、なんて気の抜けた風に納得――
「――って、そんなわけないじゃないですか!?」
「チッ」
「舌打ち! 舌打ちしましたよね今!?」
「してない」
「しました!」
「してにゃい」
「してなかった!? ってそれ別ネタでしょ!」
「春のくせに粘るな。戦闘でももっと粘ってくれたらなぁ」
「ぐはっ」
ぐさりと来たのか、沖田は胸を押さえた。
死ーん、と沈黙する沖田にも思うところはあったらしい。気絶したふりをして馬上に倒れ伏す。手綱を握るのに邪魔なので襟首を掴んで上体を起こさせた。
首が絞まったのか、ぐへ、と間抜けな声がする。
「ひ、ひどいですマスター……」
「酷いのはお前の病弱っぷりだろう」
「追い打ち?! この鬼! 悪魔! マスター!」
「ははは」
「笑って誤魔化さないでください! 沖田さんはそんなんじゃ誤魔化されませんからね!」
誤魔化されてるじゃないか。
ぎゃあすか喚く沖田を宥めながら思う。絶対に逃がすわけにはいかなかったフィンを斃すためとはいえ、使用した禁忌。あれはもう封印した方がいい。記憶の欠損が思ったよりも深刻だった。
しかし……いざという時は、やはり使わざるを得ないだろう。固有結界が展開できないのだ、他に切り札に成り得るものがない。それにあの火力を使わないとい
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