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戦国異伝供書
第三十八話 意識する相手その五
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「そうしたものを感じますので」
「そのことが気になりますか」
「武田殿と織田殿はお考えをあらためねばなりません」
「天下泰平の為に」
「そう考えています」
「そこまでお考えとは」
「まだ先ですが。しかし西国も気になりますが」
 甲斐や尾張のあるこちらもと言うのだった。
「東国もですね」
「はい、関東も奥羽もです」
「それぞれ大きく動いていますね」
「関東は相変わらず北条家が勢力を伸ばしています」
 この家がというのだ。
「このままではやがてです」
「関東管領の上杉家をですね」
「上野から追い出されるでしょう」
「やはりそうなりますね」
「そして奥羽は伊達家と最上家がです」
「大きく伸びていて」
「殿が以前言われた様に伊達家の嫡男殿は」
 梵天丸、彼はというのだ。
「日に日にです」
「その才を出されていますね」
「私もそう聞いています」
 本庄もというのだ。
「その様に」
「ではこれからは奥羽もです」
「見ていくことですね」
「それが大事です」 
「ではそちらにも」 
 忍の者をやって調べるとだ、本庄は景虎に約束し実際にそうした、長尾家も越後もまとまってきていたが景虎はこのことに安穏とはしておらず田畑や街を整えると共に各地の動きにも目を向けていた。その中で。
 景虎のところにある者が来た、その者はというと。
「関東管領の上杉様の家臣の方がです」
「わたくしにですか」
「はい、お会いしたいとです」
 その様にというのだ。
「申し出られていますが」
「そうですか、ではです」
 その話を聞いてだ、景虎はその話を持ってきた新発田に答えた。
「お会いしたいとです」
「返事をしても宜しいですか」
「はい」
 是非にという返事だった。
「その様に、今使者の方はどちらにおられますか」
「越後との境に」
「ではすぐにです」
 まさにと言うのだった。
「使者殿にお伝え下さい」
「この春日山までですか」
「来られたしと」
「では」
 新発田も応えた、こうして使者はすぐに春日山城まで案内されてそのうえで実際に景虎の前に参上した、そのうえで彼に話した。
「最早当家は上野を守りきれず」
「それでなのですか」
「はい、上野を巣て越後に落ち延び」
 そしてというのだ。
「長尾殿のお力をお借りしたいのです」
「私のですか」
「そうです」
 まさにと言うのだった。
「そのことをお伝えする為に拙者は参上しました」
「そうだったのですか」
「それで殿はです」
 関東管領の上杉定実、彼はというのだ。
「今はです」
「まだ上野におられますね」
「はい、ですが」
 それでもというのだ。
「先程お話した通りで」
「北条家の攻めからですか」
「耐えられなくなっています」

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