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ある晴れた日に
228部分:オレンジは花の香りその十一
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オレンジは花の香りその十一

「だからよ。ライオンズブルーなのは」
「それでこの色ってやっぱりあれよね」
 静華は壁のその青を見ながら恵美に尋ねる。
「あんたがライオンズファンだからよね」
「親もそうなのよ」
 それもあるというのだった。
「お爺ちゃんがね。元々九州生まれで」
「九州!?」
「昔西武は九州に本拠地があったからよ」
 恵美は九州と聞いて首を傾げさせた皆に対して答えた。皆は店に入るとそれぞれカウンターやテーブルに着いた。カウンターやテーブルは木造で床と同じ色だ。それがかえって壁や店の柱の青を引き立たせる形となっている。青とブラウンのコントラストというわけだ。
「だから。ライオンズファンだったのよ」
「西鉄とかの時代だね」
 加山がそれを聞いてぽつりと述べた。
「それって」
「ああ、わかるのね」
「わかるよ」
 加山は恵美に対して頷いて答えた。
「西鉄強かったからね」
「その時にファンだったのよ。こっちに移ってからもね」
「昔からのファンだったんだね」
「それでお父さんがファンでね」
 親の贔屓がそのまま子供に移ったというわけである。これもあるといえばある話である。
「それで私も」
「つまり三代に渡ってライオンズファンってわけだな」
 野茂はここまで話を聞いて納得して頷くのだった。
「そういうことか」
「そういうこと。それでこのお店も私で三代目よ」
 くすりと笑ってみせてきた。普段はクールな恵美だがこうした笑顔もできるのだった。またその笑顔がかなり爽やかで清々しいものであった。
「この街に来てからね」
「九州では何やってたんだ?」
 坂上は彼女の祖父について尋ねた。
「御前の爺ちゃんさ。何やってたんだ?」
「喫茶店よ」
 こう彼の問いにも答えた。
「家が喫茶店でね。そっちのお店もまだ福岡にあるわよ」
「ああ、福岡か」
「ええ」
「代々喫茶店だったんだな」
「戦前からね」
 かなり年季が入っている話であった。
「空襲でも焼け残ったお店でね」
「運いいわね」
 明日夢は空襲から焼け残ったという恵美の祖父の店の話を聞いて腕を組んで素直に羨望の声をあげた。
「私のお爺ちゃんのお家なんか空襲でものの見事によ」
「そういや横須賀って海軍の基地あったっけ」
「そうよ。それで何度も何度も念入りに空襲されたらしいのよ」
 茜にも述べる。
「それでものの見事にね」
「で、こっちに引っ越してきたの?」
「そういうこと」
 この辺りはまことに人それぞれであった。
「もっともこっちも見事に焼け野原だったらしいけれどね」
「そういえば神戸も派手に空襲受けてるのよね」
 静華の話は深刻な内容だがその言葉は彼女らしい能天気っぽさが出ていた。
「地震も酷かったけれど」
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