だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話
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うからボールが飛んできた途端に慌てふためき、ミスを犯してしまうというのはどうなのだろう。トラブル対応集や想定問答集の一冊二冊くらいは作っておくべきだったのではないか。生徒会役員らしからぬ、お粗末なリスクマネジメントだったのではないか――。
後悔に沈んでいるうちに、総一郎も学校の最寄り駅についてしまった。
駅の改札を出て、通学路をとぼとぼ歩いていく。
惨めだった。
が、いつのまにか到着していた校門の前で、ふと思った。
(ん……? いや、待てよ)
一概に悪い結果だけとも言えないのではないか?
彼を席確保要員呼ばわりしたことは当然よいことなどではないが、それは自分が今後も彼の前に立ち続けるという宣言をしたことにもなる。そして彼はそれに対し、笑顔をもって答えた。内心がどうかはともかくとして、申請書に承認印を押してくれたということだ。
つまり、今回の失策によって不可逆的な関係解消となってしまったわけではない。明日以降も、堂々と彼の前に立つことはできるのである。
虚偽答弁の罪悪感についても、明日以降、彼が下車したあと実際に席に座ってしまえばいい。そうすれば『嘘から出たまこと』となる。やや恥ずかしさはあるが、座ってみたいという思いがなかったわけではない。
(なんだ。絶望することはなかったな。まだ失点は取り返せる)
落ちていた肩が、元どおりになった。
天を見上げる。みずみずしい、春の青空。
(もうテストなどどうでもよい)
明日また彼に会えるだろうから、テスト中の時間も使って頭の中の準備を整えておこう――。
総一郎は挽回を誓い、門をくぐるのだった。
なお、テストの結果は学年一位だった。
(『だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話』 終)
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