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だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話
だいたいチーバくんのおかげでややこしくなった話
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間に学校の最寄り駅についてしまった。
 隼人は網棚の野球用バッグを取り、頑張って作った笑顔で彼に小さく会釈すると、逃げるように下車した。

 駅の改札を出て、通学路をとぼとぼ歩いていく。
 惨めだった。

 が、いつのまにか到着していた校門の前で、ふと思った。

(ん……? いや、待てよ)

 今のは、単に自分の勘違いが判明し、現状がわかっただけのことで、別に何かがマイナスに振れたというわけではないのではないか?

 逆に、事実がわかってよかったのかもしれない。自分が席取り要員ということは、また自分が座っていれば、彼は目の前に立ってくれるということでもある。ならばここから先、チャンスはいくらでもあるということではないだろうか?

(よし――)

 落ちていた肩が、元どおりになった。
 天を見上げる。みずみずしい、春の青空。

(仲良くなるために、これから頑張っていこう)

 隼人は新たなスタートを誓い、校門をくぐるのだった。


 なお、テストの結果は全教科赤点だった。



 * * *



 総一郎は最近、朝の電車で気になっている人がいる。

(よし、今日もいるな)

 視線の先は、同じ車両の席に座っている学ラン姿の学生である。高校二年生になったとき、総一郎の気まぐれで乗る車両を変えたことで、同じ車両の乗客同士となった。

 彼の名前は知らない。
 だが学生服が学ランの高校は、この地域に一つしか残っていない。よって、あまり偏差値の高くない某高校の生徒であることはすぐに特定できた。また、網棚に野球用バッグが載っており、たまにチャックの隙間からグローブが見えていることや、手にできているマメやタコから、どうやら野球部員だということもわかっている。

 総一郎はいつものように、彼の座っている席のすぐ前に立った。もちろんこれは今日だけではない。毎日だ。

(しかし、いかにもスポーツマンという感じに見えるな、彼は)

 一言で言えば「スリム」のくくりになってしまう体型なのだが、一味違うのである。
 学ランの上からでもわかる、がっしりとした肩。相当鍛えているのだろう。そして、座っていることで一段と際立っている太ももの筋肉。両隣で死んだように眠っているサラリーマンのそれとは、質がまったく異なる。

 観察が不自然にならぬよう、総一郎は授業ノートをバッグから取り出した。もちろんその中身を読むつもりなど微塵もない。今日は中間テスト最終日だが、勉強は十二分に足りている。

 総一郎は勉強するふりをしながら、観察を続けた。一ヶ月続けてきてもなお、彼を見ることは飽きない。

(さぞ学校では人気があるに違いない)

 顔にも、体育系の爽やかさがある。動くのに邪魔にならなそう
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