純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 19
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「ぷりしらさまー! みてみて! げんかんからはいってこなかったわるいひとたち、ぜーいんつかまえたよ!」
気絶中のクァイエットは放置して蔵書室を出ると、廊下の先、玄関ホールに集まっていた子供達が一斉に両手を振り、足下に固まっている複数の人影を示しつつ、「こっちこっち!」と声を張り上げた。
その周りでは騎士達が、ちょっとだけばつが悪そうに頭を掻いたり腕を組んで俯いていたり目線をさ迷わせたりしている。
そりゃあ、自分達の食事中に子供達が自力で侵入者を捕まえていたと知れば、護衛としては居心地も悪くなるだろう。仮令それが上司と護衛対象が予め仕組んでいた事であっても。
しかし、此処は都民に厭われている孤児達の家だ。特別な時だけにしか来ない護衛に頼っていては、この先も生きてはいけない。
自分達の身は、自分達で護る。
彼らは幼すぎる身でそれを熟知し、その為の力と術を嫌でも習得しなければならなかった。そうしなければ、限りを知らない人間の悪意に潰されてしまうからだ。
プリシラに非が有るとするなら、使い方次第で誰かの命をも奪ってしまう凶悪な力を、そうとは知らない無垢な子供達に教え込ませた事。
人は誰しも、望む望まないに拘らず大なり小なり過ちを犯してしまう生き物だ。ミネット達もきっと、綺麗なままではいられない。
彼らもいつかは知る。
人ならざる強大な力を持つ神々ですらどうにもできなかった世界の……人間の、果てしなく救いようが無い醜さを。脆さを。儚さを。
その時、身に付けた力と術が、彼ら自身の心をどうか傷付けてしまわないようにと……今はただ、願うしかない。
可能な範囲で知恵を絞り手を尽くしても、結局はプリシラにも願うしかできないのだ。
人間は自我を優先させたがる生き物だから。
「本当……面倒な世界だこと」
右手をぎゅうっと強く握り締め、流れ落ちそうな血を手のひらの内に隠して苦笑う。
騎士達への事情説明や施設の内外で捕まってたり倒れたりしている侵入者達の扱いはベルヘンス卿に任せておくとしても、今日を生き抜いた子供達への称賛や施設内の後片付け等はプリシラの管轄だ。子供達に勘付かれる前に、この傷の手当てもしておかなければいけない。
何処に身を置いていても、やるべき事は山と積まれてプリシラの訪れを待っている。
「……ええ! 皆、お疲れ様!」
それが辛いとは、今はまだ感じないけれど。
プリシラは、護りたい者達に向かって足を進めながら、救えなかった者達を想って胸の内で燃え盛る炎にそっと、分厚い蓋を被せ直した。
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