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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 19
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めんなさい……あなた……』

 最後のあれは、こういう意味だったのかよ、母さん……ッ!


 「……生きるって、難しいわね。呼吸や食事や運動の連続だけじゃ赦されないんだもの。本当に……難しい」
 「! ちょっ、おい!?」
 オレが頭を掻き毟ってる間に、女が窓際へ身を寄せた。
 外側の不気味な人影もそれに気付いてか、唇をニタリと歪めて歩み寄って来る。
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 「おい、待っ……!」
 お前さっき暗殺者がどうたらこうたら言ってなかったか!? 剥き出しの刃物を持ってニヤニヤ笑ってんだぞ、そいつ!? うっかり近付いたらヤバイ奴なんじゃねぇのかよ!?
 そう叫んで制止させようと動かない体でもがいてる間に、窓を挿んだ内と外で二人分の輪郭が重なり

 「貴方達はどんな生き方を選ぶのかしら?」

 女の手が窓枠に触れるか触れないかの刹那
 「う、っぅわあああああぁぁあ……!」
 オレ自身の絶叫と同時に勢いよく開いた窓の音が、両耳を容赦無く貫いた。







vol.27 【それでも、全てが愛おしい】

 燭台だけが照らし出していた蔵書室の内に、少しだけ明るさを増した月の光が入り込む。
 出口を得た室内の空気が一斉に飛び出し、冷たい夜風と入れ替わった。
 だが、其処に清々しさや心地好さは無い。
 鋭く尖った針先に足裏を乗せるような危うい緊張感が、夜風に誘われて蔵書室内の隅々まで広がっていく。
 「はぁい、プリシラ次期大司教サマ。お楽しみの時間は終了?」
 「そうねぇ……。楽しみたくても、相手が気絶しちゃったらどうしようもないもの。残念だけど、今日は此処でお開きだわ」
 窓枠に寄り掛かった二人の女性が、机の下で仰向けになって目を回しているクァイエットを眺めつつ、朗らかな口調で談笑する。
 色々なものが限界を超えたらしい彼は、悲鳴と共に意識まで手放してしまっていた。
 「あらあら。ただ窓を開いただけなのに気絶しちゃうなんて、失礼なお子様だこと」
 「その剣が怖かったのよ。彼は空き巣の常習犯だけど、人を殺傷した経験は無いもの。混乱窮まった瞬間に殺されるかも知れない恐怖心が加われば、誰だってこうなっても仕方ないんじゃない? 私達には理解できない感覚だけど」 
 「ふぅん? そんなんでよく此処に乗り込んで来れたわね。伸びてる間に解体(バラ)されるとは思わなかったのかしら」
 「気絶した後どうにかされるかも……なんて考えが及ぶ程度の下地も無いのよ。悪振りたいだけで、根は純粋な子だから」
 「青臭いの間違いでしょう。いっそ今摘んであげたらどう?」
 「これでも素質は認めているのよ? 現在(いま)は未熟な果実でも、丁寧に手を入れてあげれば、美味しく完熟させられるわ。というコトで、彼のお
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