暁 〜小説投稿サイト〜
魔術師ルー&ヴィー
第二章
]
[8/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
口を開いた。
「クラウェンへの抜け道だ。」
 その答えには、さすがのルーファスも驚いた。
 本来ならば有り得ないのだ。同じ国内ならいざ知らず、国境を跨ぐ緩衝地帯から他国の街へ入る抜け道などある筈がない。
 しかし、マルクアーンは平然と話し始めた。
「先の戦の際、溢れる妖魔を食い止めるためにリュヴェシュタンとゾンネンクラールの二国で作った道がある。それがこのシエルから北西に少し行った所まで続いておったのだ。そこから入れば、その先はクラウェンの東の郊外へと出られた筈だ。」
「ですが…それは大昔の話なのでは…?」
 その話にウイツは半眼になってそう言うと、マルクアーンは「案ずるな。」と自信を持って返した。
 だが、ここで開門を待つ訳にもいかず、一同は一抹の不安を抱えながらもシエルを後にしたのであった。
 暫くは街道を走っていたが、その街道が森の中へと入るやマルクアーンはとある地点を指差して言った。
「あそこから入れ。」
 今、魔動車を操作しているのはウイツであったが、彼は一旦それを停止させ、振り返ってマルクアーンへ尋ねた。
「申し訳無いのですが…どこでしょうか?」
「前に見える大木があるじゃろ?」
「あの樫の古木ですか?」
「そうじゃ。あれの左側にこちら側の出口があったのだ。」
 そうマルクアーンが答えると、ウイツは低速で注意深くそちらへ向かった。それと同時に、マルクアーンはヴィルベルトに言って乗っている荷台へと強化の魔術を掛けさせた。
 ウイツが意を決して道から逸れて藪の中へと魔動車を進めると、古びた道が確かに存在していた。
 が…余りに歳月が経っているため、普通の馬車どころか人もまともに通れはすまい…。
「師匠…。」
「皆まで言うな…。ま、行ってみるしかねぇだろ?」
 不安を訴えようとしたヴィルベルトに苦笑しつつそう返すと、ルーファスは遠見の魔術を行使した。
 遠見…とは言うものの、本人の目で見る訳ではない。自身の精神を飛ばして先を見る魔術である。
「ウイツ。少し先、中央に大木がある。左側から回れ。」
「了解。」
「ここから右にカーブしてるから気を付けろ。」
「分かった。」
 こんな遣り取りを四、五時間程続けただろうか、彼らは森を抜けて草原へと出ていた。疎らに木は生えているものの辺が良く見渡せる。
「ここらで少し休もう。」
 ルーファスがそう言うと、皆はそれに賛同した。ルーファスは兎も角、魔動車を操作しつつ魔力を使っていたウイツは限界であろう。
 数本の木が生えている影に魔動車を止めると、四人は軽く食事を取って暫し休息に入った。
「師匠、次は僕が操作します。」
「そうだな。お前が創ったもんだから、使い方はわかってんな?」
「はい。思った以上に良く出来ていて安心しました。」
「ああ、そうだな。」
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ