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魔術師ルー&ヴィー
第二章
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なく、魔術を織り込んだ布や糸で作るんだよ。布を織る機材や縫い針さえ特殊なものでね。まぁ、言ってみれば一生ものだから、この質でこの値段なら安い方だよ。」
「そうは言っても…。」
 ヴィルベルトは未だ腰が引けている。
 それもそうだろう…。今までルーファスと旅をし続けて、金に困らなかったことはない。尤も、ルーファスがわざとそうしていたのであるが…。
「君、ルーファスが外套を洗っているとこ、見たことあるかい?」
「そう言えば…ありません…。」
「これは汚れても、自然に汚れを浄化する作用もある。魔術の防御だけでなく、直接攻撃にもある程度は耐えられる様に作られているんだ。こいつを剣で切り裂くなら、魔術を帯びたものや神聖術を付加したものじゃないと切り裂くことも出来ない。勿論、火にも強いし水も弾く。」
「はぁ…そう言う事だったんですね…。」
「そうだよ。でも、これを買ってこいって事は、ルーファスは君を一人前の魔術師として認めたって事なんだ。」
「えっ…!?」
 ヴィルベルトはウイツの顔をまじまじと見る。そんな二人を、店の主人も笑みを浮かべて眺めていた。
「ヴィルベルト君と言ったかね。」
「あ…はい。」
 店の主人は我慢仕切れなくなったのか、ヴィルベルトへと話し始めた。
「魔術師にとって、この外套はシンボルの一つ。これに見合った知識と力が備わらなければ、たとえ身に着けたとしてもただの布。これは師が弟子の魔術師課程の第六修、つまり最終課程一歩手前までを修了した証として贈るのが慣わしなんですよ。」
 ここで言う魔術師課程とは、全部で七つある魔術師修練のことである。
 修練自体、各々細やかに分かれてはいるものの、概して七つに分けて考えられているのである。この課程を修了しない限り、どれだけ力があっても魔術師とは認められない。
 ここで出てきた第六修は"魔術の行使と実践における種々の修練"とされ、ヴィルベルトはそれを修了したことになる。
 次なる第七修は"総合的実践としての師との実戦"とされ、要は今まで導いてくれた師と本気で手合わせ…戦うと言うことである。
 大陸全ての国で、法により魔術師や神聖術者らは互いに戦う…力を行使し合うことを禁じている。大惨事になりかねないからである。唯一、この第七修だけが公に認められた魔術師同士の戦いと言えよう。
 無論、国同士の戦が起こればその限りではないが、それだけ魔術師同士の戦いは危険なのである。故、一人前と認められなければ、この第六修を修了することは絶対に有り得ないのである。
 それだからこそ、ルーファスはヴィルベルトを連れて旅をした。
 通常なら第六修を修了するには二十歳を越えてしまう。だが、ヴィルベルトは未だ十七である。力も素養も充分に備わっていても、それらを統べる精神をコントロールするには、王都で修
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