欠ける無限、禁忌の術
[10/15]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、何故ならディルムッドが健在だからだ。
沖田は一瞬で調息し呼気を整え、仕掛けてくるディルムッドを討ち取らんと踏み込んだ。赤い長槍が迅雷のように閃く。沖田はそれを、微かに身を半身にしながら飛び込む事で呆気なく躱した。
「見切った――」
「――だろうな。待っていたぞ、アサシン」
ディルムッドは敢えて双槍の技の幅を狭め、単調にして、繰り出す技の軌道を沖田に見せていたのだ。
故に沖田に槍を躱され動揺などするはずもない。誘い込んだのはディルムッドなのだ。そして沖田の踏み込みの速さも格闘術の確かさも見ている。ディルムッドは赤槍を突き込むや自ら更に沖田へ接近する。短槍の間合いですらない、零距離。
沖田は急激に接近してきたディルムッドに面食らいながらも反応した。釣られてしまった――その不覚に鈍る剣者ではない。飛び込んできたディルムッドの膝蹴りを辛うじて腕を交差させて禦ぐ。しかし、防禦の上からすら痩身を貫通する衝撃は大きい。腕が痺れ、フィンの槍によるものと合わさり、刀を取り落としてしまった。華奢な体が膝蹴りの威力に負け宙に浮く。ディルムッドはくるりと体を廻し、激甚なる蹴撃を見舞った。
「か、はッ……!」
まともに横腹を捉えられ、沖田は芥の如くに吹き飛び地面を転がった。吐瀉に混じる鮮血。沖田は上方より飛来するフィンに気づき、咄嗟に跳ね起きて縮地で難を逃れる。獲物を見失ったフィンの槍が地面を穿って、そこを大きく陥没させて砂塵を舞わせた。
フィンは槍を横に振るって、その風圧で砂塵を晴らす。徒手空拳となった沖田は刀の落ちている地点を一瞥する。フィンは彼女を讃えた。
「お見事。並みの英雄なら既に突き殺しているところだが、貴女は逆に何度か私を殺せるかもしれなかったな。ディルムッドがいなければ危うかったよ」
「主よ、ご油断召さるな。この女、技量の一点のみなら我ら二人を束ねたよりも上を往きます。徒手空拳となってもどんな隠し球があるか……」
「分かっているとも。だが戦とは技量のみで決するものでもない。先程は醜態を晒したが、もう覚えた。悪いが儚くも鮮烈なる乙女よ、これから先は殺りに行かせてもらう」
「――斬り合いの場でお喋りなんて……」
不快げに沖田は吐き捨てるも、その悪態は小さい。沖田には彼らとのお喋りに興じるつもりなど寸分たりとも有り得なかった。
もはや是非もなしと、彼女は札を切る。主の許しもあった。彼女は『誠の旗』を現し、それを地面に突き立てる。
「此処に、旗を立てる――」
「主! アサシンが宝具を使おうとしています!」
「! ……ならば惜しむものもない。往くぞディルムッド!」
即座に妨害に動こうとする寸前、沖田は両名の間に懐から取り出した投影宝具を投げつけた。それは主に与えられたもの。銘は|金
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ