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人理を守れ、エミヤさん!
欠ける無限、禁忌の術
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を見舞うが、幻惑の歩法を以てフィンの目測を狂わせて槍閃は空を切る。沖田は着地したフィンに斬りかかった。

「むっ……!」

 目にも止まらぬ、どころではない。完全な技量のみで神代の大英傑をも超える接近速度。人智の極みと言える斬り込みの迅さに、しかしフィンは初見でありながら辛うじて反応してのけた。サーヴァントとしての機能(スキル)ではない、純粋に積み上げた戦歴から来る経験則である。
 槍を縦に構えて首を刈る斬撃を防禦した。鋭利な刃が神殺しの槍の柄に阻まれ――転瞬――沖田の斬撃が軌道を変える。槍の柄を滑った沖田の愛刀が狙うはフィンの指。得物を握るそれを切断せんと翻ったのだ。
 フィンはなんとか手首を捻り手甲で刃を受け流す。そのまま槍を旋回させて沖田の細頚を薙ぎ払った。捉えたと確信するに足るカウンター、されどそれは踏み込んだ沖田の残像を捉えただけだった。フィンの膝下の位置まで頭部を落とし、倒れ込むように接近した沖田がフィンの脚を切り裂かんと愛刀を振るう。だが、フィン・マックールも然る者。薙ぎ払いが空振るや、片足の力だけで軽く跳躍して剣者の刀身を躱した。
 そこで終わらないのが、天才剣士の魔剣である。剣理への拘りなどない、剣が折れれば鞘で、鞘が折れれば拳で。実戦本意の殺人術が牙を剥く。沖田は跳躍した優美な美貌の英雄に食らいついた。

「破ッ!」

 両手で振るっていた刀から、いつの間にか左手が離れている。そして魔法のようにその手に愛刀の鞘が逆手に握られていた。地面を蹴り抜いて停止するや、その勢いと威力を乗せて鞘を跳ね上げる。それは過たずフィンの顎を打ち上げた。

「グッ!?」

 視界に火花が散る。着地する脚がよたつき、よろめいたフィンの腹部を雷迅のような蹴撃が穿った。
 華奢な女と侮るなかれ、天賦の才を遺憾なく発揮させる脚力である。沖田の剣は足腰の強さに由来し、その敏捷さが無ければ対人魔剣は成らないのだ。規格外の大弓に引き絞られた大槍の如く奔った穿脚は、果たしてフィンを藻屑の如く吹き飛ばす。()れる、その確信からトドメを刺すべく追撃に出ようとする寸前――沖田にとって厄介な騎士が割り込んで来た。

 背後を突き刺す穂先じみた細い殺気。咄嗟に沖田は反転した。稲妻のような刺突が沖田の髪を掠める。
 
「俺を忘れてもらっては困るな、セイバー……いや、アサシン!」

 剣の腕も然るものだが、それ以上に第一撃の奇襲の印象が勝ったのだろう。双槍の騎士は沖田の呼び名に迷うも、答えはその両方である。
 剣士であり暗殺者、それこそが幕末に血風を吹き荒ばせた新撰組、その一番隊隊長なのだ。奇縁により生前に最も近い形で現界した沖田は、その剣腕の限りを尽くすに不足のない霊基を持つ。

 だが――相手は沖田総司をして幻惑される稀代の騎士
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