欠ける無限、禁忌の術
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「まずは俺を中心に円陣を組め」
迅速に応じて兵士達が行動する。大柄な男達ばかりである。小柄な沖田はそれに隠れてしまった。
もはや一刻の猶予もない。直ちに戦闘体勢を整えねばならなかった。
「沖田、気配を消せ。お前の体力の無さは分かっている。縮地は最小限で、三段突きはなるべく使うな。いいな?」
「……斬れると判断出来たら良いですか?」
「ああ。そこは自己判断だ。頼むぞ」
「はい。マスター、御武運を」
「お前もな」
視線を合わせ、頷きを交わすと暗殺者のクラススキルを発動して沖田が気配を消す。そして怜悧な愛刀の構えを一時解いた。「速く――鋭く――」己に深く暗示を掛けて肉体と精神が戦闘用のものへと切り替わる。それは日ノ本の剣豪ならば、誰しもが基本とする自己変生だ。
それを見届けた士郎は前を見る。間もなく銃の射程圏内に踏み込んでくるケルト戦士らを睨んだ。敵サーヴァント達はこちらの目論見を見抜いたのだろう、敢えて歩を緩めて待ち構える算段だ。
だが構わないとも。分かっていても沖田は奇襲を成功させる。真っ正面から正々堂々不意打ちする。士郎は裂帛の気を吐いた。
「――横二列に展開! 左翼一列に二十、二列目に二十。右翼も同様だ、残りは中央に布陣!」
「了解!」
小隊長二名が即座に応じる。往時の彼らでは遅滞の出たであろう行動が、今は全員が一人の人間のように動けていた。横二列に並び、一列目が片膝をつく。二列目が立ったまま。
「撃ち方構え! 銃の精度に頼るな、弾幕を張り面で叩きのめす! ……撃てェッ!」
百の銃撃が一斉に轟く。陣形もなく蝗のように襲い掛かってくるケルト戦士らは、楯で弾丸の雨を凌ぎ、時には弾丸を剣や槍で弾きながら接近してくる。その頭上に剣弾を浴びせ――人間達の死闘は幕を上げた。
沖田が馳せる。
仙術の域に限りなく近い魔の歩法。
第一撃は神速でなければならない。故に刻むは間合いを縮める足捌き。新撰組鬼の副長、土方歳三をして沖田の剣術は剣術ではなく、別の何かと謂わしめた異形のそれである。
刀を構え、一歩目を踏み出した時点で既に気配遮断は解かれ、フィンらはその気配を捉えた。だが驚愕に眼を瞠く。気配を感じた瞬間に、沖田が彼らを自らの間合いに捉えていたのである。
沖田が真っ先に狙ったのはフィンである。主の命令だからというのもある、しかし何よりも馬上の敵というのは彼女としては遣り辛い。故に駆け抜け様にフィンの騎乗する白馬の前肢を切断したのだ。フィンはこれに対処できない、自らを狙ったのなら反応も出来ただろうが、沖田の殺気は白馬に向いていたのである。
白馬が走行の勢いそのままに転倒し、地面を滑っていく。悲鳴の嘶きを上げる白馬の背からフィンは飛び降りていた。空中で巧みに槍を操り沖田に槍
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