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人理を守れ、エミヤさん!
欠ける無限、禁忌の術
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だ無茶は出来る。無理な時も相応の遣り方はある。

 作戦を変えると決めた。このままではいけない。

 必勝の策があった。まず固有結界を展開し、自身らと敵サーヴァントだけを取り込み、ケルト戦士は排除するのだ。そうする事で数の利を奪い、叩き潰すのである。しかし――

 ――魔術回路、内在霊基に異変を検知。固有結界、展開不能。

「ッッッ!?」

 最初に双剣銃を投影した時に感じた違和感の正体を知る。自身に打ち込まれている楔、その霊基が常のそれから反転しているのだ。
 魔力さえあれば、霊基の補助がなくとも士郎は固有結界を扱える。しかしただでさえリスクの大きい大魔術故に、些細な異物ですら許容できないのだ。これまでは寧ろ、霊基は補助してくれていたのが、今はその真逆。霊基が裡に閉じている感覚があった。いや、そうではない。閉じているのではなく、裡に向いている……?
 これでは固有結界が使えない。歯噛みしたくなるが士郎は瞬時に意識を切り替えて戦術を元に戻した。

「――リロードの仕方は忘れていないな? 的が被ってもいい、全ての弾を使い切れ。手近の奴から蜂の巣にしてやれ!」
「了解!」
「春」

 馬上の士郎は或る宝具を投影して、その使用方法を伝えると沖田に渡した。沖田はそれを懐に忍ばせる。
 士郎は口の中に滲む血を唾に混ぜて吐き捨てた。剣製とは言えない宝具を、魔力にものを言わせ投影した代償が彼を苛んでいた。

「お前の役割に変わりはない。敵サーヴァントを抑えていられるなら無理をして倒そうとはするな。だがもしも斃せると感じたなら、最優先はフィンだ。奴を斬れ」
「はい。――マスター」
「なんだ」
「下手に死なせまい、死なせまいとすると、却って被害は増えるものだと昔、土方さんが言ってました。だから――」
「そんな事は分かっている」

 分かっているから苦しいのだ。分かっているから悔しいのだ。だから……いや、泣き言は言うまい。これ以上は覚悟してこの場に残った仲間達全員に対する侮辱となる。頭を振る。どれだけ熱くなってもいい、だが頭だけは冷静に、冷徹でなければならない。
 深呼吸をする。そして士郎は灼熱の檄を発した。

「悔しさが男を作る、惨めさが男を作る、悲しさが男を作る。そして強大な敵こそが、真にお前達を偉大な男にしてくれる。今、お前達は偉大だ! この俺がお前達を英雄と呼ぶ! 時代も弁えず迷い出た亡霊どもを、このまま地獄に叩き返してやるぞッ!」

 ――おぉぉぉッッッ!!
 兵士の士気は最高潮に達した。それは死を覚悟した者達の、されど悲愴さのない激熱の咆哮だ。
 それに唇を噛む。死ぬ覚悟ではなく、生き残る覚悟が欲しかった。それを持たせてやれない己の到らなさが猛烈に口惜しい。しかしそれを飲み干し指示を出した。


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