欠ける無限、禁忌の術
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に付き合ってやった方が、こちらとしてもやり易くなるものさ」
「なるほど」
「故にだ。披露してやるとしよう。戦の定石にはない、しかし『我らの戦の定石である』戦術を」
フィンは不敵に笑って、疾走する馬上から槍を掲げ追い縋ってくる後方の戦士らに号令を発した。
「散開せよ! 各自思い思いにその武勇を振るうがいい!」
――その光景を目にした士郎は驚愕した。
ケルト戦士らが自ら隊形を崩し、バラバラに散ったのだ。ケルトの戦士達にも戦に関する常識はあった、軍勢となれば陣形を組む程度の知能はあったのだ。それを自ら捨て、五百の群ではなく五百の個となったのである。『これでは的を絞れない』。だがいいのかそれは。そんな策を実行すれば戦士側の被害も甚大なものになるではないか。
いや、被害が出てもいいのだろう。ケルトは無尽蔵の兵力を有しているらしい。全滅しても敵を殺せるなら何も問題ない……フィン・マックールは大胆不敵にして激烈な采配を振るう勇将だが、それ以上に『ケルトの将』である事を忘れてはならなかったのだ。
フィン・マックールはペンテシレイアとは全く違う将帥だ。個の武勇でもアマゾネスの女王に劣らず、しかしその知略は明らかに上回り。ペンテシレイアが強敵と戦ったのはアキレウスのみであるのに対し、フィン・マックールは数多の難敵を下し、戦を征し、神をも殺した騎士である。戦歴という面でもあの女王を超えている。そしてこの遭遇……偶然にしては出来過ぎだとも感じられた。何せあのフィンは、最初から戦闘があると分かっていたかのようではないか。それはつまり、こちらの動向が筒抜けだったのではなく、『読まれている』という事の証明である。
士郎は確信した。
あの騎士団長だけは、何がなんでも絶対に殺さねばならない。『さもなければ未来はない』。
「破損聖杯接続――投影開始ッ!」
土壇場という物がある。転機と呼べる物がある。此処がその一つだと、士郎の幾度もの実戦を経て培ってきた心眼が告げていた。ケルトとの戦い、その序盤の戦いの転機であると。即ち――フィオナ騎士団の団長フィン・マックールを討たねば、それだけでこの大陸に生きる人々の被害が激増するという事である。
その言語化の難しい洞察を、士郎は信じた。己を信じずして真に仲間を信じられるものではない。多数のM4の弾倉を投影して辺りに手当たり次第に撒いた。それを兵士らに拾わせる。そして彼らが辛うじて扱えるだろうサーベルも人数分投影して装備させた。
魔術回路が高熱を発している。剣の要素のない物を短いスパンで大量に投影したツケだ。破損聖杯により魔力は問題なくとも、疑似神経である魔術回路の性質が変わったわけではない。しかしその苦痛も慣れたものでしかなかった。ま
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