欠ける無限、禁忌の術
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が膝を地についている。迷う暇はない。やらねばならない。
裡に向かう霊基の固有結界、反転したそれ。世界を広げるのではなく、心象世界を千切り取り。その断片を弾丸に装填する。筆舌に尽くしがたい激痛に意識が白熱した。まるで千切り取った心象世界が、傷となって肉体に走ったかのような灼熱が背中に走る。
一条の傷んだ黄金の線。背に刻まれるそれに眼が眩む。視界が欠ける。復元された視力はこれまでよりも遠くを見据えられるようで、基礎的な動体視力が増している気がした。裡にある楔から根が広がったような錯覚。
「──So as I pray, 」
馬腹を蹴る、強化されている黒馬が疾走した。一直線にディルムッドを轢き潰さんと駆ける。
ディルムッドは士郎の……敵マスターの接近に気づき驚愕した。まさかマスターがサーヴァント同士の戦いに割り込んで来るとは思わなかったのだ。ディルムッドは飛び退いて黒馬の突進を躱すも、士郎の黒い銃剣に異様な魔力を見て取り慄然とした。
「主ッ!」
銃口が何を狙っているのかを悟ったディルムッドが警告を発する。即座にフィンは振り向き、槍の穂先を背後の士郎に向けようとした。
だが、その直前に引き金は引かれた。
「――無『』の剣製」
放たれるは禁断の大魔術。禁忌の弾丸。
それは固定砲台となっていたフィンには躱せなかった。振り向く途中のフィンの脇腹から弾丸は彼の体内に侵入し――無限の剣が、フィンの体内に炸裂する。
固有結界『無限の剣製』を、標的の内部で展開する禁咒。叡知を持つフィンは体内に送り込まれた禁術の脅威を察し、ディルムッドに叫んだ。
「ディルムッド、一旦引け――」
言葉になったのはそこまでだった。フィンは内側から無限の剣製に内包される剣に貫かれ、霊核を一瞬で破壊され即死する。斃れた彼は、消滅していく。
ディルムッドは唇を噛む。主の仇を討とうとして、しかしフィンの脅威が消えた事で近藤や永倉、斎藤が刀を手に駆け出しているのを見て取るや断念せざるを得ないと状況を読む。主の遺命もある、ディルムッドは臍を噛む思いで大きく跳躍して後方に跳び、そのまま身を翻して撤退していった。
彼の胸中に、主が討たれた怨みはない。戦場の倣いだ、それに自身らは討たれて然るべき悪である。寧ろ口惜しさと同等の称賛の念もあった。よくぞ討ってくれた、貴公らは我が主の心を苛む悪行から救ってくれたのだと。またいつか再戦を。その時も本気で行く。故あって加減は出来ないが、見事この身を討ち取ってくれ。――ディルムッドはそう思う。
ヒュドラの神毒を除き、あらゆる痛みにも呻く程度に圧し殺していた士郎は、しかし肉体ではなく精神の痛みに苦悶を漏らして落馬した。
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