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ある晴れた日に
209部分:思いも寄らぬこの喜びその九
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思いも寄らぬこの喜びその九

「とにかくな」
「白くし過ぎるにし過ぎるってことはないらしいわ」
「あいつの言葉だな」
 正道にはすぐにわかった。
「高山のだよな」
「ええ。茜ちゃんそう言って塗ってくれたの」
 こう正道に話した。
「それでこうしたふうにね」
「やっぱりな。ところで」
「何?」
「何で今この部屋に来たんだ?」  
 未晴のその白一面になった顔を見て問うた。
「この部屋に。どうしてなんだよ」
「これ」
 言いながら服の袖から何かを出してきた。
「差し入れようと思って」
「んっ!?」
 見ればそれは飴だった。ミルクキャンデーである。かなり甘くミルクの味も濃厚な独特のキャンデーである。それを彼の前に差し出してきたのだ。
「これね」
「飴か」
「どう?」
 差し出したうえで彼に対して問うた。
「これ。リラックスできると思って」
「悪いな」
 礼を述べた。
「忙しい時にわざわざ。それにこれ御前が買ったんだよな」
「クラスにたまたまあったのよ」
 そのことはあえて言わずそういうことにするのだった。
「それでね。ちょっと」
「それでか」
 正道もそういうことにした。話はわかっているがそれはいいとした。
「ええ。それ食べながらね」
「仕事やってくれってか」
「気分転換になるわ」
 だから差し入れたのである。
「だからね。いいわね」
「わかったよ。それじゃあな」
 未晴の言葉を受けたうえでそのキャンデーも受け取る。これで話は決まった。
「じゃあもうすぐだな」
「そうね。話してる間にね」
 また腕時計を見る。あと五分だった。
「じゃあ。そろそろな」
「ええ。私も」
 未晴は席をゆっくりと立った。
「これでね。舞台に行くわ」
「ああ。じゃあ後は打ち上げだな」
「そうね。その時にまたね」
「飴。悪いな」
 彼はまた未晴に礼を述べた。
「有り難く頂くな」
「音楽、頼むわ」
 最後にこう声を交わしてそのうえで未晴は部屋を後にした。未晴が去ると正道は一人になった。しかし寂しさは感じずキャンデーの袋を開けて一つずつ出しながら口の中に入れてそのうえで仕事にかかる。今上演開始で音楽もかけるのだった。
 音楽のスイッチを入れたところでそのうえでキャンデーを舐める。忽ちその甘さが口の中を支配した。彼はそこにただそのキャンデーの甘さを感じていただけではなかった。
「いいな」
 キャンデーを舐めながら呟く。
「この甘さがな。今までのとは別だな」
 微笑みながら仕事を続ける。今は一人だがそれでも一人ではなかった。
 舞台は大成功だった。拍手が長い間鳴り止まなかった。主役の二人の演技も評判がよかったが全体的にかなり好評だった。その日の夜クラスの面々は明日夢の家の店であるス
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