第五話
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ポケモンへの酷い行為は社会問題になっている。
「もしかしたら、あのラルトスもそんなふうになってるんじゃないのかなぁ……って、考えるとさ」
人ですら簡単に人を嫌いになるのに、ポケモンが……と考えたら、答えは容易に出てくる。
「……お前、やっぱり良い奴だな。その歳でそこまで気が回るのは立派だよ」
「……二つしか違わないよ?」
「二つも違うんだよ。このぐらいの歳の二年は、かなり大きいぞ?」
ユウキくんはそう言うと、僕の向かいに椅子を持ってきて、ドサッと座る。堂々と脚を開いて座るところや、頬杖をついてこちらを覗き込むなどの仕草一つ一つが、同年代の子供とは思えない程、大人に見えた。
だからか、ユウキくんの言葉には、かなりの重さがこもっているように感じていた。
「お前なら、いいトレーナーになるぞ?俺が保証してやる」
ユウキくんはそう言うと、ニヤリと笑った。僕は、少しだけ戸惑った。
「……僕、喘息持ちでさ……旅に出れるかどうかすら分からないよ?」
僕の事情を知ってる人なら、そんな事を口に出す人は居なかった。全員が全員、無理だろうと思って接していた。
「出なけりゃ、出来るかどうかわからねぇぞ?」
「へっ…………」
「弱音戯言は、やって無理だった時に始めて言えよ。やるかやらねぇかじゃない。やりたいかやりたくねぇか、だ」
だから、こんなふうに言ってくれる人なんて、一人もいなかった。
……両親ですらも。
「……そうだよね」
少し泣きそうになりながら、それを必死に隠す。
僕が周りに、無理だ無理だと言われ続けていたからか、僕自身が無理だと決めつけていた。
「取り敢えず、明日ラルトスに会ってみようと思う」
「……そうか。頑張れよ」
ユウキくんは一言そういうと、椅子からスっと立ち上がり、自分のベッドに向かっていった。
「さてと…そろそろ寝るかな。もうこんな時間だしな」
「……そうだね」
時計を見てみると、もう十時を回っていた。昨日の夜が遅かったこともあり、中々眠たくなってきた。
「じゃあ、電気消すぞー」
「うん……おやすみなさい」
「ああ。おやすみ」
ベッドにいそいそと潜り込んだ僕らは、直ぐに目を瞑った。
気が付いたら、見知らぬところに立っていた。
辺り一面には、不思議な形をした真っ赤な花が咲き誇り、何故だか知らないけど、そこが僕のために用意された空間のように感じていた。
僕はその光景に不思議に思うことは無く、ただただ、何かを待っていた。
ずっと待ち望んでいたことが、もうすぐ叶うような高揚感。
それこそ……初めてポケモンをゲッドした時のような。
……足音が、聞こえてきた。
ザッ
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