ターン8 最速加速の大怪風
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はない。手札が吹き飛ばされることこそどうにか防いだものの、彼自身の体がともすれば浮かび上がりそうになる。ただ一人ロベルトのみはその中央、台風の目に位置する場所でほとんどその影響を受けぬままに仁王立ちして風に翻弄される周りの様子を見据えていた。そしてその手が、その口が、動く。
「独眼群主、大刃禍是の効果発動。独眼群主は召喚、ペンデュラム召喚時に1枚。同じ時に大刃禍是は2枚バウンスする」
召喚の余波も収まりきらないうちに独眼の紅龍が赤い竜巻を1つビッグ・スターに、四つ足の妖獣が緑の竜巻を2つ鳥居の伏せカードに向け発生させ、またもや空気がうねり切り裂かれる。この畳みかけにはついに鳥居の我慢も限界に達し、風圧に耐えきれなくなった彼の体がなすすべなく浮きはじめ、抵抗空しくその両足がついに地面から離れた。
みるみるうちに上昇して何メートルも回転しながら天井近くへと飛ばされていく彼の姿を見上げ、その後に起きる悲惨な光景を想像した観客から小さく悲鳴が上がる。しかし誰よりも早く叫んだのは、ほかならぬ彼自身だった。
「『なんということでしょう、まさに大怪風!おまけにこの効果が決まってしまえばもはや私のフィールドはカラも同然、神域の獣たちの連携攻撃によってこのライフはすべてが失われてしまうでしょう……ですが!』」
その直後会場の皆が見たものは、空中に突如浮かんだオレンジ色のクッションのようなものが飛ばされ続けていた彼の体を受け止めた光景だった。そのクッションのようなものはみるみるうちに乱気流に乗って会場を飛び回り、そのうちのひとつがたまたま1回戦から彼の試合を間近に見ていた1人の観客の手元に届く。思わずといった様子で手を伸ばしてそれを掴んだその男が、あっと驚きの声を上げる。
「これ、風船だ!しかも、これってさっきも……」
その言葉に周りの客も、もう一度自分たちの周りを飛び回るオレンジの物体へとその目を凝らす。そう、それは確かに無数の風船……コウモリを模した形の、オレンジ色の巨大な風船だった。そして彼らは最初の男の言葉通り、これと同じものをつい先ほどの試合でもその目にしている。そのことに観客の大多数が気づいたタイミングで、おもむろに天井から明るい笑い声が会場中に響く。
「『これは失敬。私としたことが、少々注意が至りませんでしたね。確かにお客様の中にいらっしゃるかもしれない心臓の弱い方にとって今の一幕は、少しばかり刺激が強すぎるものとなってしまいました』」
そう明るく謝罪する声の主は、当然に鳥居浄瑠その人である。ではなぜ、いまだに天井からその声がするのか?その理由は、彼の左手にあった。手札を持ったままの右手は垂らしたまま、空いた左手で彼はいくつものコウモリ型風船をかき集めてその紐を握りしめていたのだ。ふわふわと浮く巨大な風船
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