ターン8 最速加速の大怪風
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→ロベルト(直接攻撃)
ロベルト LP1400→0
『き……決まったぁーっ!まさかまさかの大波乱、優勝はチャレンジャー、鳥居浄瑠だぁーっ!』
スピーカーから声が響き、1瞬の沈黙。次の瞬間、会場全体が揺れたかと見まごうほどに観客が湧いた。鳥居の勝利に賭けて莫大な配当金を手にしたごく少数、ロベルト勝利の当てが外れて大損が確定した者、賭けには参加せずにただデュエルを楽しみにしていた者……様々な悲喜こもごもの感情が爆発するも、その反応はやがてひとつに纏まっていった。いったい誰が最初に始めたのか、最初は小さかった2人の勝負をたたえる拍手が、やがて全体に広がっていったのだ。
そしてそんな全方位から浴びせられる拍手を受けてほとんど反射的に深々とした礼を返しながらも、鳥居は自身の目頭が熱くなるのを感じていた。これがかれこれ10年以上ずっと味わう機会のなかった、もはや記憶の中だけの皆を楽しませるデュエルの形。
「う……!」
そんな彼の視界の端に、うめき声と共に起き上がろうとするロベルトの姿が見えた。そのトレードマークである後ろ向きの帽子は、あれだけのデュエルを経てもなお頭から外れる気配はない。
「チャンピオン!」
近寄って手を差し出し、巨人が起き上がる手助けをする。その手を掴んで頭を振りつつ起き上がったロベルトもまた割れんばかりの拍手を見渡し、小さく微笑んで一礼する。
「見事。俺も現役と比べ腕は鈍っている、だがお前は強い、それに変わりない。生まれる時代が違えば、立派なプロになれた男だ」
「あいにくだけど、プロ入りには興味がないんですよね」
肩をすくめてそう返すと、何がおかしいのか轟くような大声で体を反らせて笑い出すロベルト。その発作が落ち着くまでには、30秒近い時間が必要になるほどだった。
「とぼけるな、お前は表舞台に立つ。そうすべき男だし、実際そうだったはずだ。あの場慣れした雰囲気は、素人に出せるものではない」
「……さて、なんのことやら」
「まだとぼけるか?まあいい、今日は楽しかった。これは礼だ」
あまり深く追及は行わず、代わりにロベルトが取り出したのは1枚のカードだった。差し出されたそれを見た鳥居が、思わずその顔を見上げて問い返す。
「こ、これって?」
「このカードをどう使うか、俺の感知するところと違う。使いたければ使えばいい、そうでなければ仕舞うなり売り払うなり、自由だ。だが俺はお前が戦士として気に入った、これはその敬意の証だ」
「あ、ありがとう……ござい、ます?」
戸惑いながらも受け取ると、その反対の手をいきなり掴んだロベルトがおもむろにその手を上に掲げる。されるがままに手を高くあげさせられ混乱する鳥居の耳に、頭上から低いがよく通る彼の声が響いた。
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