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戦国異伝供書
第三十七話 兄からの禅譲その六

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「まずないかと」
「うむ、境を接していてもな」
「奥羽とは別の国です」
「越後は西国に入る」
 天下の区分でというのだ。
「そして奥羽は東国じゃ」
「関東と共に」
「そして越後の北から見てもじゃ」
「奥羽は遠いです」
「だからじゃな」
「それがしとしてもです」 
 越後きっての兵法者である宇佐美もだった、奥羽から攻められることはというのだ。
「まずないかと。我等にしましても」
「奥羽のことはな」
「まず縁がないですな」
「こうして話をしてもな」 
 それでもというのだ。
「遠い国の話じゃな」
「どうしても」
「だからじゃな」
「一応という話で。むしろ東国となりますと」
「関東じゃな」
「関東は相変わらずです」
 こう前置きしてだ、宇佐美は晴景に話した。
「北条家が日に日に勢力を増しておる」
「関東管領の上杉様もか」
「圧倒されておりまする」
「河越の戦以降そうなっておってじゃな」
「それが日に日にです」
「勢いを増してか」
「はい、最早です」
「上杉様は北条家には敵わぬか」
「やがて北条家は関東の西を制圧し」
「東もか」
「上総や下総にも兵を進めております」
 関東の東のそこにというのだ。
「そうなっております、ですから」
「関東の東もか」
「やがては」
「そうなるか」
「はい、ですから」 
 それでというのだ。
「関東は危ういかと」
「北条家のものとなるか」
「北条家が関東を制すればです」
「越後は上野と境を接しておる」
 関東のその国と、だ。
「だからじゃな」
「はい、ですから」 
 まさにというのだ。
「我等は北条家をです」
「用心してじゃな」
「見ておきましょう」
「それがよいな」
「そして西の」
 こちらもだった。
「一向一揆も」
「あの者達は何かと越後にも来るのう」
「越後にも門徒がおりますので」
 それ故にというのだ。
「ですから」
「そうであるな」
「関東に一向一揆にとです」
「悩みが尽きぬな」
「まことに。ですが」
「それでもか」
「はい、我が家は今は」
 何といってもとだ、宇佐美は晴景に話した。
「虎千代様がおられます」
「だからじゃな」
「一向宗との戦もです」
「これまでとは違ってな」
「圧倒さえしております」
「そうであるな、ではな」
 晴景は宇佐美のその話を聞いてここでも言うのだった。
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