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人理を守れ、エミヤさん!
士郎くんは一人のために、士郎くんは皆のために
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せ、ぺろりと湿った舌で顔を嘗めてきた。自分の身体能力が著しく上がった原因が、本能的に士郎だと分かっているらしい。今の快走がお気に召したらしく、またやれとせっついているようである。
 擽ったい。士郎はこそばゆさを堪えながら再び馬に乗る。沖田を自分の前に座らせ、腕を回して手綱を握った。

 やがてまたも森が見えてくる。日は斜陽に差し掛かり、今夜はあそこで夜営だなと思っていると――不意に兵士の一人が大声で報告してきた。

「BOSS! 後方を!」
「だからBOSSは止せと――」

 士郎は言いながら後ろを見る。すると、其処には大きな砂煙を上げながら進軍してくるケルトの戦士団がいた。
 舌打ちして眼球を強化して陣容を検める。見たところ数は五百余り。雑兵ばかりなら始末は楽なものだと多寡を括っていると……士郎は顔色を激変させた。

「カーター、全員を指揮して兎に角走れ!」
「BOSS!? 迎撃は――」
サーヴァントがいる(・・・・・・・・・)! 四の五の言わずにいいから走れェッ! お前達は邪魔だ!」

 敵軍の先頭にいるのは。

 白馬に跨がった金髪の青年である。
 手には槍。優美な美貌の持ち主で。剣としての属性もあるのか、解析は容易に出来た。
 敵サーヴァント。真名はフィン・マックール。アーサー王伝説の円卓、その原典とされるフィオナ騎士団の長。
 彼だけではない。その背後に付き従うようにして走る、美貌の双槍騎士もいる。フィンに従う二本の槍の騎士となれば、『輝く貌』のディルムッド・オディナだろう。サーヴァントが二騎も……最悪だ。

 カーターは血相を変えて指揮を取り、一団を走らせ始める。

 士郎は歯噛みした。距離が近い。このままでは追い付かれる。いや、絶対に追い付かれる。そうなったら終わりだ。鏖にされる。足止めするしかない。是が非でも。
 やれるのか。自分と、沖田だけで。いいや、やれるのかじゃない。やるしかないのだ。
 しかし士郎は、そこではたと気づく。逃がしたはずの群衆の内、二個小隊が残っていたのだ。

「何をしている!? 早く逃げろ!」
「逃げません! BOSSだけ置いて逃げるなんて、絶対出来ません!」
「馬鹿野郎ッッッ! ……クッ、今更逃げられんか……!」

 怒鳴り付けるも、今更逃げても無駄だった。あらゆる煩悶が士郎を苛む。死ぬ、ほぼ間違いなく死ぬ。こんな所で、彼らを巻き込んで死んでしまう。士郎は有らん限りの敵への罵倒を呑み込んで号令した。するしかなかった。

「――銃、構え! 吐いた唾は呑めないぞ、莫迦どもが……ッ!」
「BOSSの為に、ひいてはこれから先、BOSSが助ける人々の為に、おれ達は死ねます! だから……!」
「軽々しく何かの為に死ねるなんてほざくんじゃないッ! だが――!
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