拾いすぎだ士郎くん!
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唸りを上げ、空間を捻切りながら飛翔する投影宝具。着弾と同時に炸裂する壊れた幻想。敵軍勢に大打撃を与えた瞬間、既に距離は五百メートルにまで近づいていた。一斉に撃ち放たれる弾丸の洗礼。螺旋剣の射撃から生き残った多数の戦士が楯を正面に構えて突撃してくる。
死を恐れる素振りは欠片もない。弾丸の連打を楯で凌ぎながらも接近してくる。――その頭上に無数の無銘の剣弾が降り注いだ。
「前を防ぐか、上を防ぐか。好きな方を選べ」
皮肉げに笑い、士郎は次々と倒れていくケルト戦士を見下す。
「それとな――」
士郎は肩を竦めた。
「後方注意だ。悪く思え」
自らの傍らにいた剣者の姿は消えていた。一斉射の開始から数秒後、合図を出したのだ。一瞬にして敵軍勢の背後に回り込んだ沖田が、ケルト戦士の背中から次々と斬り伏せていく。
正面の弾幕、上空からの剣弾、背後からの強襲――混乱し隊形もなく殲滅されていくケルト戦士の軍勢。その殆どが倒れ伏すと士郎は射撃を止めさせた。肉壁が減った以上は、沖田に誤射しかねない。そう判断したのだ。後はもう、僅か三十ほどしか敵に生き残りはいない。
ケルト戦士は破れかぶれに士郎の方へ突撃してくる。その背中を沖田が情け容赦なく斬り捨てていった。士郎の前に到達する頃には、沖田が全て撫で斬りにしてしまうだろう。そう思っていると不意に、沖田が膝から崩れ落ちて吐血した。
士郎は嘆息する。
あからさまな隙を晒した沖田に攻撃しようとしている一人のケルト戦士の頭部を、腰のベルトから抜き放った白い銃剣で発砲し撃ち抜いた。
そして士郎の許に辿り着いた満身創痍、隻腕となった戦士が斬りかかってくるのを黒い銃剣で受け止め、腹部を蹴り抜いて吹き飛ばすと、そのまま眉間に弾丸を撃ち込む。
殲滅は終了した。沖田の吐血に動揺する兵士達を宥め、『虚・千山斬り拓く翠の地平』の防壁を消す。行軍を再開するとなんでもないように告げた士郎は、小隊らに元の配置につけと命じた。
こんな、簡単に……。誰かが呟く。本当に、俺達は生き残れるんだ……! 淡い希望が、確かな形となった瞬間である。
それはさておくとして士郎は沖田を回収する。若干の呆れが顔に出ていた。
「うぅ……面目ないです……」
「あのな……もう少しなんとかならないのか? 敵にサーヴァントがいたら色々とマズかったぞ」
「沖田さんも我慢しようとしてたんです……でもそれで我慢できたら苦労しませんよ!」
「これで本当に大丈夫なのか……?」
行軍を始める前、割といい空気で守り合うと言い合ったのが遠い日の出来事のようだ。士郎は安定感のある戦力が欲しい、切実に……と、思う。思うが瞬間的な戦力の瞬発力で、沖田はかなり優秀である。短期戦の一撃を決する場面が一番適して
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