拾いすぎだ士郎くん!
[3/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
だけだ。こちらが、一方的に。それにこの特異点の黒幕が軍勢召喚系の能力を持っているのは極めて厄介極まる。下手をすれば第一特異点のように、サーヴァントを斃しても再召喚なり新規召喚なり出来てしまう恐れがあった。第一特異点では戦下手な竜の魔女だった故に容易く阻止できたが、軍勢召喚系の宝具持ちが軍略なり戦略なりを解さないとも思えない。
士郎は自身の見込みがまだ甘かった事を悟る。悟るも――かといってやる事が変わったわけでもない。工兵らが穴を急いで横長に掘り終えたのを見ると、肩で息をする彼らを短く労い、兵士達へその穴の中に入るように告げた。
『虚・千山斬り拓く翠の地平』を多数投影し、それを難民達を囲うように地面へ突き刺す。流れ矢が飛ばないようにする防壁だ。虚空から現れ、地面に突き立つだけで軽い地響きがするほどの超重量は、そこにあるだけで壁となる。多数の巨大な壁が屹立した。群衆からどよめきが起こる。口頭で士郎の異能を聞かされていても半信半疑だったのが、その質量によって無理矢理に信じさせられた。そしてそれ故に、鉄の如き男への畏敬が高まるのだ。
「銃、構え」
塹壕から上半身のみを出した四個小隊がM4を構える。投影したそれらの突撃銃には、微弱な魔力の籠った弾丸が装填されていた。それで、霊体である戦士やサーヴァントにも通じるようになっていた。
「引き寄せろ」
やがて彼らも敵の姿がはっきりと見えるようになってくる。固い唾を呑み込む音が聞こえた。
兵士達が固くなっている。その中でも特に固くなっている若い兵士に士郎は言った。
「ヘルマン、力を抜け。敵を狙い、引き金を引くだけでいい」
「は……? は――ハッ!」
一度、兵士達全員は士郎に名乗らされていた。
たった一度だ。それだけで、まさか名と顔を覚えられていたとは思わず、ヘルマンと呼ばれた兵士は声を上擦らせて返事をする。
士郎はそれに表情一つ動かさず、紅い聖骸布を額に巻いた。外界からの護りのそれ――単純に髪が邪魔だったので、目にかからないようにするための措置だった。眼帯を指先で撫で、小さく傍らの沖田に言う。
「春、お前は待機だ。合図があれば動け」
「はい」
どんどん敵が近づいてくる。速い。しかし士郎は繰り返した。まだ、まだ引き寄せろ……と。
やがて敵が一q先まで近づいてくると、士郎は双剣銃をベルトに差し黒弓と螺旋剣を投影した。
「俺が一撃を加える。その後、着弾と同時に射撃開始だ」
了解! と昂った声が唱和する。士郎は黒弓に螺旋剣を番え、キリキリと弦を引き絞った。
狙いを定める。破損聖杯から流れ込んでくる魔力を魔術回路に更に慣らしながら、隻眼を鋭く光らせて。群衆の耳にこびりつく威の籠った呪文を口ずさんだ。偽・螺旋剣、と
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ