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人理を守れ、エミヤさん!
拾いすぎだ士郎くん!
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るようなものである。
 スコップで穴を掘るのは徹底して工兵部隊だ。なんで穴なんか掘らせるんだ……という疑問は彼らにもあるだろうが。どうせすぐに理由は解る。士郎は目を細めた。

「止まれ」

 片手を上げ、後ろの兵士に言う。兵士が大声で難民達に足を止めさせた。やっと休憩かと息を整える彼らを他所に、士郎は最後列から駆けて来たカーターに告げた。

「最後列の二個小隊はそのまま後方を警戒しろ。左右を固めていたCとD小隊は前へ。復唱しろ」
「は! 後方の隊はそのまま警戒、CとD小隊を前列へ配置させます!」
「行け」
「は!」
「工兵隊、横に長く穴を掘れ。深さは腰の辺りまでだ。やれ」

 指示通りに動く兵士達を尻目に、士郎は背後を振り返って難民達に気力の漲った声音で伝えた。

「前方10000の距離に敵影を発見した。真っ直ぐにこちらに進んでいる。数は砂煙からして、ざっと二千ほどだ」

 ぴり、と緊張が走る。固い静電気に皮膚を打たれたような沈黙が、彼らを硬直させた。
 しかし士郎は不敵に、硬骨な笑みを浮かべた事で微かに空気が弛緩する。

「お前達を守る者が、どれほどのものか。見せるいい機会だ。安心していろ、なんの問題もない。退避する必要も、恐れる必要もない。少し早いが休憩していろ、俺達が奴らを殲滅した後、すぐに行軍を再開する」

 それだけ言ってあっさりと背を向ける士郎を、固唾を呑んで人々は見守る。本当に大丈夫なのかという不安、大丈夫かもしれないという希望、それらを一身に受ける士郎は左右の手に双剣銃を投影する。手の中でくるくると黒と白の銃剣を回す士郎は、目を凝らして前方を睨んだ。サーヴァントがいないか気を張っている。
 サーヴァントの姿はない。ケルトの戦士のみ。気は抜かないが、最悪の事態ではなかった。と、不意に士郎は『ある事』に気づいて一人、総毛立って慄然とした。

「――」

 刻一刻と近づいてくる戦士の顔が、識別出来る距離になった時だ。士郎はその中に、以前の交戦で討ち取った戦士と全く同じ顔、同じ体格の者がいるのに気づいてしまったのだ。
 よくよく見ればそれが何人もいる。双子のバーゲンセールではあるまい。ドッペルゲンガーか? それとも……。

「宝具による召喚……軍勢を召喚する能力……? 規模が桁外れだ。聖杯のバックアップがあるな。……無限に戦力を補充し続けられる訳か」

 道理で杜撰な戦力運用をしている訳だ。
 例えばペンテシレイアのような将に率いさせれば、それだけで何倍にも脅威度の跳ね上がる戦士達を無作為に、投げ捨てるように運用している理由が解った。そうするだけで充分以上に有効だとわかっているからこその、この戦力の投げ売りなのである。
 舌打ちする。これでは幾ら敵を斃しても意味がない。無駄に消耗する
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