摩耗を抑えて沖田さん!
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安全はこの俺が保障する」
よくもこうまで言い切れるものだと沖田は感心した。本当に大丈夫だという気がしてくる。
しかし、帰る故郷をなくした人々の顔は未だに暗い。餓えているのだ。気力が萎み、脚が萎えているのである。突如として士郎が一喝した。
「見ろッッッ!!」
俯く者が多々いる中、雷鳴のように轟いた叫びに弾かれ、思わず士郎の方を見る群衆。彼らを見据える鋼の隻眼が、燃え盛る気炎を宿している。それに見入られたように人々は呆然とした。
「俺がお前達を守る。お前達は俺を信じろ。信じて、助かる事を希望しろ。生き続けてやると、こんな逆境など認めんと吼えろ。――吼えろッ!」
見本を示すように、士郎が両の手で握り拳を作り、己の胸に当てて天に向かって吼え立てた。おおぉぉぉぉ! 遠吠えのようだった。激甚な気力の籠った、莫大な熱量の放射だった。カーターが呼応して叫ぶ。兵士達も吼える。
やがてやけくそのように人々も一人、また一人と吼え始めた。早くに、気の強そうな少年が咆哮している。妹達を抱く腕に力が籠り、熱い視線で高台の男を見詰めた。
男が叫び声を止めると、次第に叫びは収まる。しかし一度燃えた火は、下火になっても残り続けた。何もなかった彼らの胸に、生への渇望が植え付けられるようだった。
「良い面だ」
満足げに士郎は頷いた。――扇動者も楽じゃないなと小声で呟くのを、煽りを受けて高揚してしまった沖田は、紅潮した頬を隠すようにそっぽを向いて返す。性質悪い人ですねほんと、なんて。
「今夜、早速発つ。長居してもいい事はない。充分に休んだだろう。だがその前に、腹ごしらえをする。カーター!」
包みで隠していた、焼いた熊肉などを部下に出させる。するとどよめきが起こった。自らを見る群衆の目に、士郎は鷹楊に頷いた。
「味気ない。物足りない。そんな事はこれから先幾らでもあるだろう。だから喰え。今だけだ、今だけは山ほど喰らえ。喰えば、すぐに出るぞ」
言っても、縛られたように彼らは動き出せずにいた。それに士郎は笑い、明朗に言い放った。
「喰えッッッ!」
出された肉に、作られた惣菜のスープに、彼らは一斉に飛び付いた。お行儀よく並べ、順番だ順番! そんな声が兵士達から出てくる。
四苦八苦しながら全員に飯を行き渡らせた。
笑顔がようやく溢れ始める彼らを見渡し、士郎は密かに微笑み。ちらりと沖田に視線を向けると低い声で言った。
「――敵は?」
その目は冷徹だった。沖田はしかし、穏やかに応じる。
「周囲に敵軍勢はいません。さっき確認しておきました」
そうか、と士郎は呟く。彼の頭の中では、既に如何にして彼らの行軍を守るかの案が組まれ始めているのだろう。
士郎は仄
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