今日からBOSSだよ士郎くん!
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三年の徴兵期間が終わった兵士を再雇用できなくなったのだ。一般大衆の戦争に対する支持が最低の時期であり、ペンシルベニアとニュージャージーの派遣部隊で反乱が起こった程である。これを受けて大陸会議は大陸軍の予算を削る事を議決した。ジョージ・ワシントンはその後なんとか戦略的勝利を掴む事が出来たが、非常に頭を悩ませていた事だろう。
理念と理想に燃えていた初期のアメリカ植民地軍と異なり、彼らには厭戦感が漂っている。徴兵されてから無理に戦い通して来たのだろう。そこへケルトの襲撃だ。よく軍が瓦解していないものである。
……それにつけても若者が多い。歴戦の兵士がまるで見当たらない。カーターが大尉なのは戦時任官で階級が繰り上げられたからかもしれない。それならその若さにも納得だ。どう見ても士郎がこの場で最年長である。まだ二十八歳の士郎が、だ。頼れる先任や上官を亡くしているからか、どことなく士郎を見る彼らの眼には縋りつくような色がある。嘆息したいのをグッと堪えた。
装備は貧弱。銃器はほぼない。
手にしているのは士郎が投影した名もない剣ばかり……。
「カーター大尉。状況は深刻だな」
「は……」
「これからどうするか、考えのある者は?」
「……」
「奴らとまともに戦える装備はない。その上部隊長を勤められる力量はお前にあるか?」
「……いえ、私では力不足です」
「……よし。では二、三ほど質問がある。答えてくれ。カーターだけじゃない、お前達も分かるなら答えてほしい。生憎と俺はお前達の置かれた状況を正確に把握できている訳ではないからな」
二十歳そこそこの若者達の顔には、色濃い疲労が滲んでいる。ジェイムズ少佐とやらが生きていてくれたら良かった。だが贅沢は言っていられない。士郎は沖田を一瞥した。
小声で周囲を警戒しに行ってくれと言うと、沖田は頷き霊体化してその場を離れる。兵士達からどよめきが上がった。消えた!? と。機先を制して士郎は先に言う。
「こちらの事については後で説明する。それより先にこちらの質問に答えてもらおう。ケルトの連中――ああ、先程までお前達を追い回していた連中の事だ。お前達は何時ぐらいから奴らと戦っている?」
その質問に兵士達は隣合った者達と小声で確かめ合った。一分ほど待つと、漸く答えが返ってくるも……士郎はその醜態に眩暈がしそうだった。
答えが返ってくるのに時間が掛かり過ぎだ。先が思いやられる。そうこうしてカーターが代表し言ってきた。
「一ヶ月前ほどです。突然現れた奴らは、無差別に人々を虐殺し始めました。これにワシントン将軍は抗戦していらっしゃるようですが、地方では殆ど抵抗が出来ておらず……火器が通じず、原始的であるのに化け物のように強い敵を前に、敗戦を繰り返して、戦線は押し込まれ瓦解しており……」
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