風の訃報
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れにもたれて、いつも通りに本を読んでいる――、タバサ。
え?
え、ええええ?
あれ、タバサ、確か胸を『風棘エアニードル』でこう、どぱぁって、血が。
あれ?
ついっとギーシュに視線を戻してみるが、くつくつ笑うばかりで何かを教えてくれるわけでもなし。
なんだかその内、気張っていたのがバカらしくなって。もう一度、目を閉じた。
結局、あれからどうなったんだろう。
ワルドが裏切ったことまでは、紛れもなく真実だ。
タバサが生きているのはワケがわからないが、まあ死んでいなかったのだからいい。
どこからが理想ゆめで、どこからが現実ほんとうなのかわからないけれど。
それでも、きっとサイトは勝ったんだろう。
だけど、ウェールズ皇太子はここに居なかった。
たぶん、王軍は今頃、負けてしまっているだろう。
皇太子はここに居ないのなら、王軍と運命を共にしてしまったのだろう。
喜びと悲しみが入り混じる。
なんとも言えない感覚だけど、これ以上涙を見せるのも癪だ。
特に、サイトに見られてしまうかもしれないのがイヤすぎる。
涙を我慢しながら、ルイズはこの任務の一連の出来事を振り返った。
裏切り者の、ワルドの策略。
意地と家名でいがみあってきたハズだった、キュルケの優しさ。
死んでしまっただろう、皇太子のこと。
護ってくれた、人たちのこと。
勝利を収めた、『聖邦復興連盟レコン・キスタ』。
そして……、王女に、伝えるべきこと。
王女に、どう報告すればいいのかもわからない。
でも、何かを。
絶対に、伝えなくちゃいけないと。
漠然とだけれど、そう思った。
風竜と二艘の凧フネは加速する。
トリステインへ。
港町ラ・ロシェールへ。
王宮へ。
才人たちが学院を出て、僅か三日と四半日足らず。
ほんの少しの時の間に、少年少女の心は大きく揺らぎ、人々は死地を脱した後の、哀しみと倦怠感、生の実感に囚われた。
多くの、暖かさが姿を見せた。
多くの、憎しみが産声を上げた。
多くの、悲しみが零れ落ちた。
多くの、力強い感情がそこには在った。
彼らはこれから何を思い、何を目指して生きるのだろ
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