風の訃報
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
来ても、彼とわたしたちで片付ける」
……彼?
タバサはそう言って、杖でわたしの背後を…、いえ、小船の向こうを、今までワルドが現れてきた方を指した。
そこに、サイトは立っていた。
こちらに背を向けて、でも、片手には朱金に煌きらめく片刃の長剣を、もう片手には草銀に煌めく刀身の、双輪の鍔つばをつけた短剣を握り締め。
ここは通さないと。
そう告げるように、力強く立っていてくれた。
自分の、傍らではなく。
遠い、所で。
ずっと、守ってくれていたのだ。
涙が、止まらなくなった。
風竜の上、誰かの腕の中で、ルイズは目覚めた。
その腕の色と、わずかに視界に入る炎のような長い髪から、自分がキュルケの腕に抱かれていると気付いた。
だいたい、風竜の尻尾の付け根辺りだろうか、ここは。
風が、頬を撫でていく。
……夢では、ないようだ。
自分は、助かったのだろう。
そして。……タバサは。
沈鬱ちんうつな気持ちで上を見上げてみれば、キュルケの寝顔がドアップで見えた。
申し訳ない気持ちで、一杯になった。
あの夜も。宿敵のはずの自分を心配してくれていた。
今朝だって、一人、式に出て。
戦って、くれて。
そんな、キュルケの親友を。
わた、しは。
涙をこぼしながら、軽く、ぽつりと呟く。
「ごめん」
違う。
「ごめんなさい」
そうじゃ、ない。
「ありが、とう」
そう、これだ。
……ツェルプストーに礼を言ったラ・ヴァリエールはわたしが初めてなのかしらね、と少しだけ苦い笑みがこぼれた。
顔を前に向けてみると、ギーシュは一つ向こうの背びれに、こちらを向いてもたれていた。
泣き顔を見られてしまったが、今はどうでも――?
なにやら口に人差し指を立て、笑って自分の背後を指差している。
いったい、なんなんだろうかと見やった、
その向こう、風竜の首の付け根の辺りに。
剣こそ構えてはいないようだが、夢と同じように、わたしに背を向けて何かを見ている使い魔。
朱金の剣を背にぶら下げ、どこかで見たベレー帽を被った、半袖の私の使い魔サイト。
その視線の先にある、見覚えのある二隻の凧フネ。
そして何よりも、サイトの足もとに。
ちょこんと、背び
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ