風の訃報
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てしまったらしい。
正面には、心配そうに覗き込んでくるタバサの顔。
うわやべえ、女の子の前でぼろぼろ泣くとか、ただの恥ずかしいやつじゃねえか。
でも止まんないし。やっべ。
その向こうには、ニヤニヤと笑い始めたギーシュとキュルケ。
「タバサ、ちょ〜っとダーリンは傷心中なのよ〜」
「ちょっとばかり、きみの姿をとった小魔法人形アルヴィーが貫かれる瞬間を目の当たりにしてしまってね。
情緒不安定なのさ」
……ぅおい、おまいら。
「……どうしたらいいの?」
「そうね、とりあえずは頭を抱きしめるなり、お礼の言葉を言うなりしてあげたらいいんじゃないかしら?」
こら!
「キュルケ、ちょっと冗談にしちゃタチが「そうする」……ヱ?」
ぎゅっと。
弾力のあまりない胸は、それでいながら柔らかく、俺の頭を包み込んでくれた。
「ありがとう」
キュルケとギーシュの驚いた顔が見物だったが……、とりあえずそれどころじゃねえ。
やべ、ほわほわしてる。
やーらけぇ。
きもちええ。
――あったけぇや。
もうしばらくこうしていたくて、腕をタバサの背中にまわ――
「なあ相棒、娘っこ。
ラブコメは後にして、とりあえずここを離れねえか?」
「おわぁ!」「っ」
ぱ、っとちょっと距離を開ける。
デルフか、空気読めよ。
「だから読んだんじゃねえか。
一応ここの頭上は戦争中ってこと忘れんなよ」
それもそうだな。
「そ、それじゃあタバサ、出しゅっぱ――あ、そうだ」
「?」
「これ、返しとく。ありがとな。……でも、お前は真似しないでくれよ」
後半は独り言気味になったが、シェルと、胸に孔のぽっかりと空いた『物真似人スキルニル』を、タバサに受け渡した。
タバサはしばらくその両方を見つめていたが……、ややあって、
「わかった」
そう、頷いた。
「……さ。それじゃ、帰ろうぜ。トリステインに。
お姫さまへ、任務の顛末てんまつを語りに。
凧フネが見つかったりしねえよう、こそこそとさ」
ぼんやりと、夢の中を彷徨っていた。
故郷の夢。
あの日に見た、夢の続き。
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