風の訃報
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──────――間。
「……ああ」
「そう、ですか」
俯うつむいた頭に、ベレー帽越しに、俺よりも少し大きな、線の細い、それでいて硬い手が、ぱさりと乗せられた。
「――きみは、平民だ。使い魔という身分を与えられた、ただの平民だ」
「…………はい」
「だが、わたしは。それが、『ただの平民』という身分が、とても眩しく見えた」
「……」
「きみは……、私のようにはなるなよ。
きみには、自由がある。
きみは、きみの大事なものを、選んでいくといい」
「――はい!」
擦かすれた声で。尻上がりに。
でも、大きく返事を返す。
「俺――、おれ、あなたのことを、忘れません。
おれ、あなたに誓います。
おれは、俺が信じる者を――、守りたいものを、何があっても守り抜くことを――、
護りたかったものを、護りぬくことを、あなたに誓います!」
王子さまは、少し驚いたように目を見開くと。
「ありがとう」
そう、微ほのかに笑ってくれた。
「さあ。もう行かなければ。これ以上遅れては、パーティに間に合わなくなってしまうからね」
きびすを返し、会場せんじょうへ赴く王子さまに、最後の問い賭けを口から解といた。
「また……、会えますよね」
半分だけ振り返った王子さまは、ふっ、と苦笑を浮かべると、
「ああ」
快く、返事をくれた。
ヴェルダンデが掘った穴を滑り台の様に通り抜けた先は、なんでか空中だった。
「やっと来たわね、ダーリン」
「遅いよ、サイト」
上を向いていた視界には、遠く光る白い丸が見えた。
どうやら、港への昇降孔のど真ん中に出たらしい。
シルフィードの背中に尻餅をついて(ぎゅえ、と声がした)、辺りを見回してみる。
足元、30mメートルほど下に雲の上を浮かぶ二隻の凧フネ。
シルフィードの口には、来る時と同じように銜くわえられた功労者ヴェルダンデ。
背中の上には、揃ってマントがボロボロになったキュルケとギーシュ。
キュルケの腕の中で気絶→睡眠のコンボを発揮したらしいルイズ。
──そして、
「お疲れさま」
そう声を掛けてくる、相変わらず仮面をつけたタバサの姿が、何食わぬ顔でそこにあった。
「……どうしたの?」
はた、と我に返る。
頬には、風が当たる度に涼しくなる一本線が、いつの間にか現れ
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