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fate/vacant zero
風の訃報
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デ! 僕を心配してきてくれたのかい!?」

「きいっ」

「ああ、ヴェルダンデ! きみは、最高の心友しんゆうだ!」

 あー……。



「なあ、シェル。ひょっとして、脱出経路って……」

「ご名答。アレだよ」


 ほへぇ。



「……ええと。いま抱きついてるバカの使い魔です」


「それじゃあ、ダーリン。はやくここから逃げたほうがよさそうよ?」


 と、まだ目覚めていないルイズを背負ったキュルケが急かしてきた。

 ……あれ、こいつらこんなに仲良かったっけ?



「なんでだ?」

「聞こえない? 耳を澄ましてご覧なさいな」


 どら。



    低く轟く、火薬の音。

忍び寄る、炎の燃え盛る音。                                      .

何か炸裂したような、半端に高くて低い音。

                                           兵士たちの怒号。

断末魔の、声。    .



 そんな音が、遠く、少しずつ大きくなりながら響いている。



「しまった、出遅れたか!
 きみたち、すぐにそのモールベアが掘った穴から脱出したまえ。
 その先で、彼女もおそらく待っているだろうからな」


 そう言って駆け出そうとした王子さまの肩を、咄嗟とっさに掴んだ。



「何やってるの、ダ−リン!」


「お前ら、ちょっと先に行っててくれ。

 最後に、少しだけ話がしたいんだ」


 じっと。

 キュルケを、そうして見つめる。



「……わかったわよ。急いでね、ダーリン」


 キュルケはそういうと、ルイズを包み込むように抱きかかえなおして、躊躇ためらいなく穴の中へと跳びこんだ。

 次いでモールベアが、ギーシュが跳びこんでいき、あとには俺と、王子さまだけが残された。



「それで、話とはなんだい? 時間もないことだ、急いでくれるとありがたいのだが――」


「やっぱり、行くんですか」

「ああ。やはり私は、『王子』であることを辞められないようだ」


 自嘲するように呟く王子さまを見ながら。

 さっき、ついさっき、シェルの使った人ぎょ――――いや、タバサ・・・が胸を射抜かれる光景を思い出し……、締め付けられるような痛みを堪えて、その言葉を口にした。



「後に遺されるものが――それで、どんなに悲しんだとしても?」



 ──間。



 ────間。



 ──────間。



 ────────間。



 ──
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