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fate/vacant zero
紅の礼拝堂
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いかぬ」


 ウェールズが困ったようにそう告げる。

 だが……、ワルドはそれ・・を耳にした様子も無く、視線一つ動かさずにルイズの手を取った。



「…………緊張、しているんだ。そうだろルイズ。
 きみが、僕との結婚を拒むわけがない。そうだろう、ルイズ」

「ごめんなさい、ワルド。
 憧れなのよ。もしかしたら恋だったのかもしれなかった。

 でも、憧れだったの。今は、もう違うのよ」


 その途端、ワルドの気配が一変した。

 両手はがっしりとルイズの肩を掴み、双眸はきつく吊り上がり、その面持ちは、どこか爬虫類を思わせる冷たいものへと変わった。



「い、いたっ……」

「世界だ、ルイズ。僕は世界を手に入れる。そのために、きみが必要なんだ!」


 熱っぽい口調で段々叫ぶように話し始めたワルドに、ルイズは脅おびえながら、それでも首を横に振る。



「……わたし、世界なんか、いらない」

「僕にはきみが必要なんだ! きみの能力が! きみの力が!」


 ワルドはカミソリを思わせる語調でルイズへと詰め寄った。



 ルイズは、ただただ恐ろしかった。


 あのワルドは、優しかった昔のワルドは、何処へ行ってしまったのだろう。



 ――これは、誰なんだろう?


 後ろへ思わず後ずさると、キュルケがワルドとの間に出来た隙間に割り込んできた。



「ちょっと、脅えてるじゃないの。もう少し落ち着い――」

「黙っておれ!!」


 ワルドはそう叫ぶと、思いっきり左手でキュルケの横っ面を張り倒した。

 キュルケは勢いよく跳ね飛ばされ、辺りの長椅子の群れへと突っ込んで、それが壊滅的な轟音を奏でる。


 そんなGを子音に持つけたたましい音をBGMに、ワルドはなおも捲くし立てる。



「ルイズ、いつか言ったことを忘れたか!
 きみは始祖ブリミルにも劣らぬ、優秀な魔法使いメイジへと成長するだろうと!
 きみは自分で気付いていないだけだ! その溢れんばかりの才能に!」


「ワルド……、あなた――」



 ――いったい、何が彼を、こんな人物へと変えてしまったのだろうか――







「お、おい! サイト!
 サイト、何処へ行くんだ!」


 才人は、その声に振り向くことなく、自分たちが朝、ここへきた通路へ――城へと向かう一本道へと、迷わず飛び込んでいった。



「ああもう――ミス・タバサ! 後は任せたよ!
 ぼくは、サイトを追う! 追って連れ戻してくる! きみは、下で待っていてくれ!」


 ギーシュはそう叫ぶと、シルフィードから飛び降りて、才人の後
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