紅の礼拝堂
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っと。
そう言って一歩を踏み出そうとしたワルドを、さらに別の手が制した。
わたしはサイトと、向き合ってこなかった。
「キュルケ?」
わたしは、サイトと、本当の意味で言葉を交わさなかった。
「あたしに任せてくださらない? 女同士の方が、こういうのは得意ですのよ」
どうしてだろう。
サイトに、会いたい。会って、話をしたい。
「……任せよう」
でも、なんで今、そんなことを思うの?
キュルケはニッコリと微笑み、ルイズへと一歩を踏み出した。
それは、きっと――
「……ルイズ」
「ふえッ!」
内心で結論を出し、我に返ったルイズは、自分を覗き込んでいるキュルケの顔に気付いて思いっきり驚愕した。
「大丈夫?」
そう言ってくるツェ――キュルケの顔は、本当に心配してくれていると思える顔で。
その向こう、ウェールズ皇太子は苦笑して、ワルドはいつものように微笑んでいて。
それ・・に気付いた時、わたしは、わたしの心を決めた。
「緊張しているのかい? まあ、仕方がないか。
初めてのことは、それがなんであれ緊張するものだからね」
ウェールズは、苦笑しながら言葉を続ける。
「まあ、これは儀礼に過ぎないことだが、儀礼には儀礼の価値と意味がある。
では、繰り返そう。
汝は始祖ブリミルの名において、この者を愛し、敬うやまい、慰め、助け、伴侶とすることを――」
ウェールズが言葉を続ける中、ルイズはゆるりと、だがはっきりと、首を横に振った。
「――新婦?」
「……ルイズ?」
「ルイズ――」
怪訝な顔のウェールズとワルドが、心配そうなキュルケが、ルイズの顔をまじまじと見つめた。
ルイズはキュルケに軽く眉を落として微笑むと・・・・、ワルドに向き直り、瞳に涙を浮かべ、潤んだ視界で再び首をふるふると振った。
「どうしたね、ルイズ。気分でも悪いのかい?」
「……違うの」
「日が悪いのなら、また改めて――」
「違うの。そうじゃないの。
……ごめんなさい、ワルド。わたし、あなたに応えられない」
ワルドの時が、凍りついた。
いきなりの"花嫁"の拒絶に、ウェールズは面食らいながら言葉を発した。
「……新婦は、この結婚を望まぬのか?」
「そのとおりでございます。
――お二方には大変失礼をいたすことになりますが、わたくしはこの結婚を望みません」
ワルドの顔が、さっと紅く染まった。
「子爵、まことにお気の毒だが、花嫁の望まぬ式をこれ以上進めるわけには
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