紅の礼拝堂
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礼拝堂
さて、才人たちが避難民たちを眺めていた頃。
ウェールズ皇太子とキュルケは、ニューカッスル城の礼拝堂において本日の主役、新郎と新婦の登場を待っていた。
ウェールズは王族の象徴たる明るい紫の外套を羽織り、七色の羽王国の象徴をつけたベレー帽を被っている。
皇太子としての礼装だ。
キュルケも借り物ながら、鮮やかな赤のベールドレスに身を包み、片手を腰にやって、ウェールズの隣に佇んでいる。
普段キュルケの使っている礼装と同じ物であった。
この場に、二人以外の人の姿はない。
皆、戦の準備で忙しいのだ。
ウェールズもまた、すぐにこの式を終わらせ、戦の準備に駆けつける心算であった。
「気分が優れないようだが、大丈夫かい?」
「……昨夜、ちょっと悪酔いしてしまったみたいですの。大したことはありませんわ」
ウェールズが思わずそう訊ねてしまうほど、キュルケの顔色は悪い。
青を通り越して白に染まっていた。
昨夜、ルイズと話した際の懸念けねんが、未だに拭ぬぐえていないのだ。
彼女が視線を向ける先。
礼拝堂の入り口が、ゆっくりと開いてゆく。
純白の外套マントを纏い、華の冠を戴いただいたルイズは、自分が何故ここにいるかを理解していないような、そんな呆然ぼうぜんとした表情で。
いつも通りの獅鷲グリフォン隊の制服に身を包んだワルドは、いつも通りの笑顔で、そこに並んで立っていた。
キュルケは、今日という日が無事に終わることを、己の懸念が外れることを、望まずにはいられなかった。
……ここは、いったい何処なんだろう?
ルイズは、着飾ったキュルケとウェールズを視界に納めながら、昨夜からずっと、戸惑う心で考え続けていた。
昨夜、キュルケが言っていたこと。
わたしが、今日・・、この地で、ワルドと、結婚式を挙げる、と。
性質の悪い、冗談だと思っていた。
それか、何かの間違いだと。
ワルドは、確かに待ってくれると言ったのだから、と。
それが、今は。
何故、わたしはこの『新婦の冠』を身に着けているの?
何故わたしは、『乙女の外套』を羽織っているの。
ワルドは、何故。わたしを礼拝堂へ、連れてきたの?
何故、王子さまとツェルプストーは、始祖ブリミルの像の前に佇たたずんでいるの。
なぜ、わたし、ワルドと並んで、二人の前に――。
「では、式を始める」
皇太子の声が、あの大砲の音の様に、雲の
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