紅の礼拝堂
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明くる日の朝のこと。
光ゴケに包まれた鍾乳洞の秘密港には、ニューカッスルから疎開するために乗船待ちをしている人々が列を成していた。
乗船待ちの列の先にはイーグル号の他、昨日イーグル号に拿捕だほされたマリー・ガラント号の姿もある。
その人混みを見下ろす高台に、才人ら3人と2振りと1頭と1匹の姿はあった。
ウェールズ皇太子からの依頼、『避難民を乗せた二隻の凧フネの護衛』のため、朝早くからこの場で出航を待っているのだ。
才人が、手近な岩肌に腰を下ろして本を読むタバサに話しかける。
「タバサ、調子はどうだ?」
「悪くない」
「そうか。無理はすんなよ?」
こくりと頷くタバサ。
目を離すと本当に倒れるまで魔法を使いそうで、どうも不安になる。
「なあ相棒。娘っこに別れの挨拶ぐらいしなくていいのか?」
いつでも振るえるように鞘を取っ払い、背中に吊るしたデルフが声をかけてきた。
「いいんだよ。今生の別れじゃあるまいし。
だいたい、会って何を話せってんだ?」
ふむ、とギーシュが隣で頷いた。
「愛しているからこそ、ひかねばならないときもある――か」
「黙れ」
「おや、それまたどうしてかね?」
「お前に言われると無性にむかつく」
そうかい、とギーシュが黙った。
「愛するがゆえに、知らぬふりをしなければならないときがある――ねえ」
代わりにデルフが喋繰しゃべくったけど。
なんか仲良くないかお前ら。
「今度はお前かよ。そんなんじゃねえって」
「じゃあ、なんでなんだね?」
「なんでって……なんでだ?」
ふっとシェルとタバサの方に話を振ってみた。
「いや、俺に訊かれても困るんだが」
「……(ふるふる)」
まあ、そりゃそうだな。
「ああ、もうこの話題は終わりだ終わり。ってか、お前ら俺をからかおうとしてただけじゃないか?」
「「してないしてない」」
そういうことはその緩んだ頬をなんとかしてから言えや。
「しかしサイト。きみ、どうするんだ?」
どうって?
「これからのことだよ。
修行しようって思ってるのはなんとなくわかるんだが、具体的なヴィジョンが見えないのが気になってね」
ああ、そういうことか。
そういえば、魔法のことをもっと知ること、ぐらいしか決めてなかったけど……どうすりゃいいんだ?
そっち関連の本でも読んでみるか? ……って無理だな。字が読めないからそれ以前の問題だし――」
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