誇りの在り処
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通りがいいだろう」
カシラだった若者は、居住いを正して名乗る。
「いかにもこの身はアルビオン王国皇太子。ウェールズ・テューダーだ」
――マジに本物の王子サマらしい。
本物の今を生きる王子サマって、海賊みたいなこともするんだネ。
ボク、知らなかったヨ。
こういうの、なんて言うんだっけ。
霹靂へきれきの晴天?
それとも、奇は小説よりも事実なり?
「どちらも諺ことわざそのものが間違ってる。
この場合は『事実は小説よりも奇なり』」
適切な回答をありがとうタバサ。
ところでいま俺、声に出してたか?
「少し」
そうか。
Fate/vacant Zero
第十七章 誇りの在り処
「なぜ空賊風情に身をやつしているのか?と聞きたそうな顔だね。
いや、驚かせてしまったようですまない。
敵の補給路を断つのは戦の基本なのだが、先ほども言ったように、いかんせん我が艦隊はイーグル号ただ一隻。
堂々と王軍旗を掲げていては、ネズミの群れに餌を投げ込むようなものだ。
まあ、空賊を装うのもいたしかたないだろう?」
そう言ってイタズラっぽく笑う王子サマに、ワルドは優雅に頭を下げた。
「アンリエッタ姫殿下より、密書を言付ことづかって参りました」
「ほぅ、姫殿下とな。きみは?」
「トリステイン王国魔法衛士隊、獅鷲隊隊長、ジャン・ヴィコント・ド・ワルド」
それからワルドは、皆を王子サマに紹介する。
「そしてこちらが、姫殿下より大使の大任を仰せ付かったラ・ヴァリエール嬢とギーシュ・ド・グラモン、フォン・ツェルプストー嬢。
そちらにいるのがタバサ嬢と、ラ・ヴァリエール嬢の使い魔の少年にございます。殿下」
「なるほど!
きみたちのような立派な貴族が我が親衛隊にもう少しでもいたら、このような惨みじめな今日を迎えることもなかったろうに!
……して、その密書とやらは?」
今の今まで呆ほうけていたルイズは、慌てて胸のポケットから封書を取り出した。
キュルケの身をギーシュに預けると、恭うやうやしく王子サマへと近づいていく。
「えっと……、皇太子、さま。……ですよね?」
ん? と王子サマは首を傾げたが、その内に苦笑を一つした。
「まあ、先ほどまでの顔を見ているのだから無理もないか。
では証拠をお見せしよう、大使どの」
王子サマは自分の薬指に光っている指輪を外すと、ルイズの手を取って、その指に光る水のルビーへと近
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