白き空の国から
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ュルケの左腕に張り付いて、傷口を撫でさすっていた。
「傷は、どう?」
「……あなたね、それもう73回目よ? 大丈夫だって言ってるじゃないの」
真剣な目のルイズと、何度も何度も尋ねられて呆れ気味のキュルケ。
ルイズはルイズなりに、何も出来なかったことに対して責任を感じているようなのだ。
ルイズの手の感触で傷の痛みを忘れられるのはありがたいが、流石にこう繰り返し心配されると、辟易へきえきしてしまうわけで。
「これから、どうなるのかしらね」
早いところ傷を治療してしまいたい。
傷さえ治れば、いつものルイズに戻るだろうし。
正直、こんなルイズを相手にしていても、張り合いが無くてつまらないわけで。
そう呟いてしまったのも、無理のないことだったわけだが。
丁度、そのキュルケの呟きと。
凧フネが、どぉんと音を上げて揺れるのと。
扉と逆側、板の壁が粘土の様にぐんにゃりと歪んだのは、ほぼ同時だった。
「あれが”フネ”で、こっちの崖の上はアルビオンか……。すげえな、ホントに飛んでやがるなんて」
「相棒相棒、オレっち確かに好奇心は大事だっつったけど、いまはそれよりもやることがあるだろ?」
「きぃきぃ」
「くきゅいくきゅい」
雲と崖のスレスレを航行する二隻の凧フネを、その下方、雲中から半潜状態で追いかけ見上げる、一塊の怪しすぎる影がある。
まず、羽ばたいて空を舞う青の風竜。幼生とはいえ、それなりに大きい。
その口には子熊みたいな巨大ハリモグラが咥くわえられている。
背中の上、翼の付け根辺りには、奇妙な半袖を着て、長剣を背負い、口元を黒布で隠した黒髪の青年剣士。
それと、片手に短剣、片手に長い杖を持った、浅緑の貫頭衣と、ナイトキャップと、白地に赤い斑まだらの入った仮面とを身に着けた、小柄な少女が座っていた。
怪しい。
十人が目撃すれば、十人が十人とも口を揃えて怪しいと言いそうなほど怪しかった。
「そろそろ」
「だな。向こうも雲海ん中に潜り始めた。準備はいいか?」
少女が呟き、その手の中の短剣がカタカタと応じ、風竜と少年、あと土竜モグラは大きく頷いた。
彼女らの視線の先、直列に繋がれた二隻の凧フネは、ずぶずぶと雲中に沈んでいき……、帆柱マストの天辺まで、完璧に雲中へと没した。
「よし、行くぞ!」
短剣に応じた風竜は鎌首をもたげ、いったん雲から姿を表す。
弓を引き絞るように身を反そらせた風竜は、勢いよく雲へと吶喊し、土竜モグラの
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