白き空の国から
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ンのマリー・ガラント号。積荷は、硫黄イオウだ」
空賊たちが、一斉に溜め息を漏らす。
頭かしらはにやりと笑うと、船長から帽子を取り上げ、自分にかぶせた。
「凧フネごと全部買った。料金は、てめえらの命だ」
船長が屈辱くつじょくに拳を震わす。
それから頭は仲間に命令を下そうと後ろを振り向き、船内への昇降口に佇たたずむルイズとキュルケ、ワルドに気付いた。
「おや、貴族の客まで乗せてんのか」
キュルケとルイズに近づくと、品定めするように眺め回す。
「どっちも、上玉だな。どうだ、おれの凧フネで皿洗いでもやらねえか?」
空賊たちの下卑た笑い声があがり、頭かしらはキュルケの顎を手で持ち上げる。
「あら、間近で見たらいい男ね」
「――キュルケ」
「そんな目でみないでよ、冗談に決まってるでしょ?
生憎とあたし、空賊の男は好みじゃございませんの。
ずっとこんな狭い凧フネ暮らしだなんて、酔っちゃいそうですもの」
「ほう。そっちはどうでえ?」
微塵も気にした様子も無く、頭かしらはルイズへとその手を伸ばす。
ルイズは、その手をぴしゃりと叩き落した。
その目に怒りの炎が灯る。
「下がりなさい。下郎」
「こりゃ驚かせてくれる! 言うに事欠いて下郎ときたか!」
頭を筆頭に、空賊たちが一斉に大きく笑いだした。
ワルドは、そんな頭を冷たく見やっている。
頭はひとしきり笑い終えると、三人を指差して命令を下した。
「てめえら、こいつらを倉庫にぶち込んどけ。身代金がたっぷりと貰えるだろうぜ」
それが、かれこれ四半日ほど前のこと。
三人はいま、空賊の虜囚として船倉に閉じ込められていた。
マリー・ガラント号の乗組員たちは、自分たちのものだった凧フネを曳航えいこうさせられているようだ。
目的地及び進路を変えたり、荷を改めたりしているだけでもかなりの時間が経ってしまったらしい。
凧フネが再び動き出したのは、三時間ほど前のことであった。
三人の持っていた杖は取り上げられ、どこへ行ったかもわからない。
杖のない貴族メイジはただの人なのだ。
外から鍵を掛けられると、手も足も出せなかった。
周囲には酒樽やら穀物のつまった袋やら、果ては火薬樽やらが雑然と並んでいる。
一角いっかくには、一抱えほどの大きさの鉄の砲弾が、こんもりと積みあがっていた。
ワルドは興味深くそれらを見て回っている。
ルイズはというと、この部屋に入れられてからずっと、キ
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