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fate/vacant zero
白き空の国から
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「1個、借り」


 と――ってコラ、わかってねえじゃんッ?



「いや、借りって言われてもほら、そんなこと言ったら俺なんて借りまみれだし、その、な?」

「でも、借りは借り」


「や、でもな。借りと借りとで相殺ってことにしないか?」

「しない」


 ……むぅ。

 意外と強情なのか、タバサって?


 一応、俺にもプライドってもんはあるんだぞ?

 もうかなり欠片になってるけど。



「じゃあ、俺は借り……あれ、何個目だっけか」


 えーと。


 こっち来て最初の授業で蛇から助けられただろ。


 それと、フーケの土人形ゴーレムの足の下から1回。

 破壊の杖の時はシェルを貸してくれたりもしたし、そもそも土人形ゴーレムの前にもなんかあった気がする。


 ヘタクソなダンスの相手もしてもらっちまってるし、この街の入り口では傭兵から助けてもくれた。

 そんでもってワルドに負けた後は相談に乗ってくれて……、おまけにうっかり抱きついちまったし……、今回の怪我、治してくれてるみたいだし。


 ――うう、いいとこねえな、俺。



「借り……、9個ぐらいか」

「多すぎる。そんなに貸した覚えはない」


「いや、たしかこれぐらいは助けられてたはずだぞ?」


「そんなことない。あなたは、わたしを高く見すぎ」

「タバサこそ、ちょっと自分を低く見すぎだと思うんだけど」


 二人して借りの有無を主張しあっていると、なんか剣やモグラの呆れた(鳴き)声が聞こえてきた。



「なぁ、どっちもどっちだと思うんだけどよ、オレっち。気のせいかなぁ」

「似たモン同士ってのはこういうことなんかな。つうか、恩の貸し借りで喧嘩してたら本末転倒じゃないか?」

「きぃきぃ」



 結局、この自分貶けなし合戦はそれから延々15分ほど続いた。


 結論:この一件でお互いに迷惑を掛けあったので、お互いに一つ借り。

 なにやってんだろうね、俺ら。









 さて、自重の嵐と時を同じくして。

 朝日を背にして空を滑る凧フネの船室で、昨夜の戦闘におけるもう一人の怪我人が目覚めようとしていた。



 どやどやと、遠く聞こえる人の声。

 丸い窓からベッドを照らす朝の日差しが、穏やかにキュルケの意識を呼び覚ます。

 いつものようにぼーっと天井を見上げ、むっくりと身を――


「あたっ!」


 起こそうとして体の脇に手を着いてしまい、肩の痛みに不意を突かれ、ベッドへ背中から逆戻りする羽目になった。



「あいたたたた……」

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