白き空の国から
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ら、その剣をいま正に俺の方に振り下ろそうとしているところだった。
一瞬後には"雲"は吹き飛ばされ、魔法が発動するだろう。
おまけに俺は、さっき転がったばっかりで、まだ立ち上がれてもいない。
――これまでか、と思った時。
「相棒、オレを構えろ!」
今の今まで沈黙して為すがままに振るわれていたデルフが、いきなりそう叫んだ。
どうせ他に出来ることもない俺は、その言葉に素直に従う。
カシラの剣が甲板を叩き、風の刃がその軌道から生まれ、俺へと向かって飛んでくるのが見える。
俺は膝を立てると、腰だめに近いデルフを勢いよく振り上げ、その風の刃・・・にデルフをぶち当て――
何の抵抗もなく、デルフは振り抜かれた。
あまりにも抵抗が無さすぎたせいで、一瞬後に訪れるだろう裂傷を覚悟し、歯を食いしばるほどに。
だが、いくら待てども風の刃・・・は体に到達する様子がない。
いや、そもそもそこに風の刃・・・がそこにあるとは思えないほど、雲は静かに先ほどデルフを振りぬいた辺りを通り過ぎていく。
「……馬鹿な。風を、斬っただと?」
そうカシラが呟いたことで、どうやら先ほどの攻撃からはうまく難を逃れることができたことを悟る。
「デルフ……、お前って、実はすごかったんだなぁ」
風を切れるなんて予想外にも程がある。
「実はってなにさ。いやまあ、オレにとっても賭けだったんだけどな。魔法を喰えるかどうかってのは」
さらっとおそろしいことを言うデルフに、冷や汗が隠せない。
「……ま、まあ、なんでもいいや。これで、俺の勝ちも見えて――へ?」
ほくそ笑みながらカシラの方を見て……、目が点になった。
「カツラ」
タバサの呟きが、ぽつりと響いた。
そう、それは正にカツラだった。
長いぼさぼさの黒髪は、先ほど剣を振りぬいた拍子にでもずれたのか後ろに滑り落ちかけていて、なにやらその下からは豪奢な金の前髪が覗いている。
……よくよく見れば、なんか無精ヒゲと目元の境目辺りがたわんでる気がするのは、俺の目の錯覚か?
「な、なに?
なっ、い、いかん!」
カシラはカツラがずりさがっているのを確認すると、そそくさとそのカツラを前へと引き寄せる。
どうでもいいが、カシラとカツラは似ているような気がしないでもない。
絶対に気のせいだろうケド。
「――ふぅ。これでよし、だ。
さぁ、戦いの続きといこうじゃないか」
そう言ったカシラの髪は、左端から一房ひとふさ
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